東都大学リーグNO.1右腕クローズアップ 球速18.0/変化球20.0/制球力19.0/精神力19.0/将来性18.0/合計94.0 
▲ダイナミックなフォームで打者に立ち向かう山崎。エースとして一本立ちし、気力も充実している
昔とは違う自分 2学年先輩の
東浜巨(現福岡
ソフトバンク)、同1年上の
九里亜蓮(現
広島)から亜大のエースの座を受け継いだのが、
山崎康晃だ。
「先輩たちが築いたエースというのは、1戦目はもちろん、万が一3戦目になってもしっかり投げる投手。自分も同じような、また先輩たちを越えられるような投球をしたい」
今春の開幕カードの中大戦では、その言葉どおりの投球を見せた。1回戦では5安打1失点、10奪三振で完投勝利。中1日で先発した3回戦では被安打4、自己最多の12奪三振で完封し、リーグ戦10勝目を挙げた。
特に3回戦は、東都リーグでは戦後初の6連覇に挑む亜大にとって負けられない一戦だった。重圧の中での好投に、チームを率いる生田勉監督は、顔をほころばせて言った。
「1、3戦目をきちんと投げてくれた。しかも3戦目の方が内容が良かったのは、彼が成長した証でしょう。エースとしての責任を果たして、チームからの信頼も増しましたね」
春季キャンプに入る前、山崎は合宿所の自分の机に東浜、九里の投球フォームの連続写真を貼ったという。
「常に2人を思い出しながらやっていこうと思いました」
キャンプでは、彼らのように完投能力を高めようと投げ込んだ。多いときで1日200球。漠然と投げるのではなく、1球1球集中して「質」を求めた。練習には一人で黙々と取り組んだ。そうすることで、マウンドでの孤独に耐えようとしたのだ。だが、かえって気づいたことがある。
「ピンチでいっぱいいっぱいになっていても、みんなが守ってくれている。周りを見て投げられるようになりました。下級生のころとは違った自分がいると感じています」。
3年半の成長 帝京高時代、プロ志望届を提出したが、指名からは漏れてしまった。即戦力でのプロ入りを目標に亜大へ進むと、1年春にリーグ戦でデビュー。先発に定着した3年春には4勝を挙げ、リーグ1位の防御率1・10をマークした。同夏には大学日本代表として日米大学選手権に出場し、救援で4試合(計6回)を無失点に抑えて最優秀投手賞を受賞。昨秋の明治神宮大会では3試合(計8回1/3)でリリーフ登板し、1失点(自責点は0)の好投で7年ぶりの日本一に貢献と、実績を積み重ねてきた。
昨年までの山崎は最速151㌔の直球とスライダー、ツーシームを軸に投げていたが、今春からは球種を増やし、投球の幅を広げている。
一つはカーブ。きっかけは今春の中大1回戦での投球だ。2回に直球とツーシームを狙われ、1点を奪われた。それを見た生田監督から「緩い球を使え」とアドバイスを受けると、3回以降は100㌔台のカーブを混ぜ、追加点を許さなかった。
「これまで緩い球は怖いという気持ちがあった。中大戦でカーブをうまく使えたことで、直球とツーシームが生きるようになりました」
もう一つが、ナックルだ。
「中学時代に変化球が投げられず、いろいろ試して最初に投げられたのが、ナックルでした」と苦笑いで明かす。中指と薬指の爪をボールの縫い目にかけて投げるボールは、回転が少なく、揺れながら落ちる。まだ精度が低く、「神宮で投げるには早いのかな」と笑うが、「打者に『何だ、この球は』と思わせる1球として使いたい」と意欲を見せている。
指名漏れから3年半が過ぎ、「間違いなく1位で指名される投手」と各球団のスカウトが口をそろえる存在となった。今季の開幕戦では埼玉
西武・
渡辺久信SDや
阪神・
中村勝広GMら各球団の編成部門のトップが視察に訪れたほか、どの試合でも多数のスカウトの視線を集めている。だが、山崎は表情を変えない。
「チームの勝利にこだわってやっているので、それは気にならない。これからの試合でもエースとしての投球をしたいと思っています」
エースとして、目指すはリーグ6連覇、そして秋春連続となる大学日本一だ。もちろん、その先には先輩たちのいるプロの舞台が待っている。
PROFILE やまさき・やすあき●1992年10月2日生まれ。東京都出身。177cm 72kg。右投右打。第6日暮里小1年から西日暮里グライティーズで野球を始め、西日暮里A地区で優勝して都大会出場。尾久八幡中では同チームに在籍し都大会4強。3年秋にKボールのオール東京で全国大会出場。帝京高では1年秋からベンチ入りし3年春には背番号1を着ける。同夏は東東京大会5回戦で国士舘高に7回コールド敗退。亜大では1年春から登板機会に恵まれ、同秋の神宮大会では先発を経験。3年春からリーグ戦の先発に定着し、防御率1位でベストナイン。同秋にはリーグ5連覇、神宮大会優勝に貢献した。東都大学リーグ通算成績は26試合、11勝2敗、防御率1.35。(第5週終了、5月1日現在)