見る者の心を揺さぶる職人芸――。それは、試合を決める劇的な一打から、派手さはなくともゲームの中で大きな意味合いを持つプレーまでさまざまである。ここでは、ベテランから今後の活躍が期待できそうな選手まで、日本シリーズの舞台でファンを魅了した職人たちに注目してみたい。 松田宣浩内野手~決めるところは決める頼れる勝負師
松田宣浩が勝負強さを発揮した。日本一が懸かった日本シリーズ第5戦、8回二死一、三塁で中前に先制打を放つと、駆け出しながら両手をたたき、自軍のベンチに向かって右手の拳を高く突き出した。リーグ優勝を決めた「10.2」の、サヨナラの決勝打を放ったときのように――。
しかし、勝負師・松田も今シリーズはマイナスからのスタートだった。CSファイナルステージでは打率.346と好調だった打撃が影を潜めた。初安打が出たのは第2戦の9回、今シリーズ通算8打席目のことだ。二死から中前に安打を放ち、「1本出るのと出ないのでは違う」とホッとした表情を見せた。しかし、第3戦では無安打、第4戦で1安打と、決して状態が良くなったわけではなかった。
そんな中、練習では黙々とバットを振り込んだ。スイングの確認にも余念がなかった。そして、不調にも悲壮感を漂わせることなく、いつもと変わらぬ底抜けに明るい笑顔で、チームをけん引し続けた。
決勝打を放った打席では、追い込まれてからバットを短く持ち替えて、
メッセンジャーが投じた148キロの直球を中前に弾き返した。
「最高の形で終われた。とにかく監督を日本一の監督にしようと、全員思っていました。達成できて良かったです」
それは、コーチ時代から9年間、指導を受けてきた秋山監督への恩返しの一打でもあった。
「意外性のある男、マッチ(松田)しかいないなと。決めるところは、決めてくれました」(秋山監督)
決めるところは決める。「10.2」に続き今回も勝負師・松田の活躍が光った。
明石健志内野手~つなぎの仕事に徹した勝利の功労者
1対0で勝利して日本一に立ったシリーズ第5戦。決勝の1点を生み出した8回に職人の技があった・・・
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