ここまで主に投手としての可能性を探ってきたが、もちろん打者としての才能も言うまでもない。今季は好調な出足こそ切れなかったが、まだまだ打撃にも底知れない成長の余地を秘めている。 写真=小山真司 
打撃成績は5月17日終了時点で16試合42打数8安打2本塁打5打点、打率.190。昨年度の打席成績は87試合212打数58安打10本塁打31打点、打率.274
天性の打撃センスと高い修正能力
幼いときから
大谷翔平を知る、兄・龍太さんの言葉が衝撃的だ。
「翔平は、打撃で悩んだことが一度もない」
花巻東高時代から160キロをゾーンに飛ばし、反対に内角球には腕をたたんで右翼方向へと引っ張る。スイングスピードも速く、ボールをバットに“乗せる”技術は、天性のものと言われる。他球団のあるスコアラーは「ボールとの距離の取り方がうまい」と、非凡な打撃センスに目を見張っている。
1年目よりも2年目、2年目よりも今季、大谷が進化している部分はどこなのだろうか。ウエート・トレーニングの成果で肉体が発達しており、飛距離が伸びていることは間違いない。フリー打撃では、侍ジャパンの主砲でもある
中田翔と並んで、チーム1、2を争うサク越え本数を誇っている。だが
林孝哉打撃コーチが真っ先に挙げたのは、そこではない。「自分の体を知っていて、それを使うのがうまい」のだと言う。中垣征一郎トレーニングコーチからも同じような話を聞いたことがある。言うなれば、バットコントロールならぬ、ボディコントロールということか。
アスリートは、その時期その時期の筋肉のつきかた、関節の柔らかさ、さらに言えば日々の体調によって、パフォーマンスに変化が出てくる。同じ動きをしているつもりでも、微妙に変わってきてしまうのだ。
野球の打者の場合は、相手投手が投げるボールの球速や球種も違ってくるため、毎スイング同じように振ることは難しい。だが大谷は、「VTRで見返したときに、頭で描いている動きがそのまましっかりとできている」(林コーチ)ことが多いのだという。
また、頭と体を一致させるのがうまいから、少しずれたときの修正も容易にできる。林コーチは「1、2打席目の内容が悪く、まったくダメだったとしても、試合の中で修正していきなり良くなることがある。極端に言えば、1打席の中でも修正できる」。昨年のデータで見てみよう。
第1打席の打率が.259(58打数15安打)に対し、試合が中盤にさしかかった第3打席の打率が・・・
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