今季、広島のベストゲームのひとつとなるだろう。小雨が降る中で駆けつけた2万8940人の期待に、百戦錬磨のベテランが全力で応えた。 写真=太田裕史 
3二塁打3打点を放った菊池[右]とお立ち台へ。「(黒田の安打は)もう2度とないですね」という菊池のコメントに思わず苦笑する場面も
6月14日の
西武戦(マツダ広島)から始まった連勝は、前日で「10」まで伸びた。1984年以来32年ぶりの11連勝へ、期待を一身に背負って6月29日
ヤクルト戦(同)の先発マウンドに上がったのは、金字塔を目前とする
黒田博樹だった。
初回は三者凡退の順調な立ち上がり。だが、2回、先頭打者の
山田哲人にバックスクリーン弾を浴びて先制を許す。しかし、ベテランに焦りはなかった。「登板間隔が空いていたので、早い回から飛ばしていけた」と気持ちを立て直すと、3回までをその1失点のみに抑えた。
打線は3回、
菊池涼介の逆転2点適時打などで一挙4点を奪い試合をひっくり返す。すると黒田は4、5、6回を三者凡退に抑えて試合の流れを掌握した。
クライマックスは4対1で迎えた6回裏だ。二死二、三塁と追加点のチャンスで、ヤクルトは八番の
石原慶幸を敬遠。今季無安打の黒田との勝負を選んだ。「ク、ロ、ダ!ク、ロ、ダ!」。打率.000の男に大歓声が送られる。その初球、
成瀬善久の投じた134キロ直球をとらえると、打球は前進守備を敷いていた左翼・
バレンティンの頭上を越える走者一掃の3点適時二塁打となった。
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6回に3点適時二塁打で自らを援護。打球が左翼グラウンドを転がった瞬間、場内は大歓声に包まれた
「初球しかチャンスはない。『1、2の3』でいったら、振ったところに来た」
今季初安打は試合を決定づける一打に。自身の日米通算199勝目(今季6勝目)とチームの11連勝をしっかりとつかんだ。
大記録まであと一歩。だが、試合後の黒田は落ち着いていた。
「200勝は通過点にしないといけない。浸っている時間はないと思う。201、202勝にしていかないとチームは上にいけない」
目指すのは通算200勝ではなく、今季7勝目。さらにその先にある栄光へ。頼れる右腕が喜びを爆発させる日は、まだ先になりそうだ。
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