16年は都市対抗と日本選手権で、ともに東海勢が頂点に立った。17年も同地区の各チームの戦力が充実しているが、関東勢らは黙ってはいない。群雄割拠の社会人球界を展望する。 文=中里浩章 
トヨタ自動車は16年夏、悲願の都市対抗制覇を遂げた
ジェイプロジェクト監督に元近鉄・大石大二郎氏就任
17年の主役は、16年の都市対抗を制したトヨタ自動車だ。日本選手権では直近10年で4度の優勝を誇りながら、「夏に勝てない」と言われてきたチーム。しかし、社会人球界を代表するエース右腕・
佐竹功年(早大)、16年から加入した
細山田武史(元
DeNAほか)のバッテリーを中心に守備からリズムを作り、安定した試合運びで悲願を遂げた。打線も
藤岡裕大、
北村祥治の亜大出ルーキーコンビや都市対抗首位打者賞の多木裕史(法大)、主砲の樺澤健(東農大)ら多士済々。17年は内野から
源田壮亮(
西武3位)が抜けるが、選手層は社会人球界屈指だから心配ご無用。就任1年目でチームをまとめ上げた桑原大輔監督(立命大)の手腕も高い評価で、このまま黄金時代に突入するかもしれない。

橋戸賞を受賞したエース兼主将の佐竹は17年10月で34歳のベテランだが、年々、投球技術が上がっている
そんな王者が準々決勝で敗退した16年秋の日本選手権は、同じ東海地区のヤマハが制している。ベテランの佐藤二朗(ワシン
トン・ルイス州立高)を軸に若手でも矢幡勇人(専大)、河野拓郎(九州国際大)、前野幹博(PL学園高)らパンチ力のある打者が並ぶ。同大会では初戦で東京ガス・
山岡泰輔(
オリックス1位)を序盤に攻略し、勢いに乗った。もともと攻撃力には定評があるだけに、カギは投手力。ただ、150キロ超の剛球を連発するドラフト上位候補・
鈴木博志(磐田東高)がいよいよ本格化してきており、楽しみのほうが大きい。

ヤマハは16年の日本選手権を初めて制した。ドラフト候補右腕・鈴木ら充実の戦力で17年も飛躍を誓う
東海勢はほかにも都市対抗4強の西濃運輸、同8強のホンダ鈴鹿、日本選手権4強の王子など、存在感を増している。そんな中、新鋭のジェイプロジェクトにはかつて近鉄で4度の盗塁王を獲得するなど活躍、のちにオリックスの監督も務めた
大石大二郎氏が新監督に就任。12年以来2度目の都市対抗出場はなるか目が離せない。
“ミスター社会人”がホンダの打撃コーチに
一方、逆襲を狙う関東勢では史上最多11度の都市対抗優勝を誇るJX-ENEOS、同優勝2度のホンダと名門2チームが新たな指揮官を迎えた。JXは黒獅子旗を獲得した08年に、捕手として
田澤純一(現マーリンズ)らをリードした山岡剛(早大)。33歳という若さでの就任は異例だが12年、13年の都市対抗連覇も経験しており、引き出しは豊富だ。ホンダはかつてコーチを務めた岡野勝俊(青学大)。こちらも09年の日本一を経験しているほか、新打撃コーチに“ミスター社会人“として知られる西郷泰之(日本学園高)、新投手コーチには00年春の甲子園優勝、09年の都市対抗で橋戸賞獲得などの実績を持つ筑川利希也(東海大)と、両脇を固める存在も心強い。
さらに都市対抗準優勝の日立製作所は若獅子賞を受賞した野手の
田中俊太(東海大)と
菅野剛士(明大)、大型右腕の
鈴木康平(国際武道大)、同4強の東京ガスは快速右腕・
石田光宏(関大)、同8強のNTT東日本も最速154キロの
西村天裕(帝京大)や各球種にキレのある
渡邉啓太(神奈川工大)と17年のドラフト候補が元気いっぱい。日本選手権準優勝の日本通運、タレントぞろいのJR東日本や東芝なども含め、関東は来季も大混戦だろう。もちろん王座奪回を目指す日本生命、日本選手権4強の大阪ガスや同8強のパナソニック、投手力の高いNTT西日本、戦力充実の日本新薬と近畿勢も加わる。JR九州、三菱重工
広島、JR西日本ら好チームも上位に割って入るか。

16年の都市対抗準優勝で若獅子賞を受賞した日立製作所・田中。社会人ベストナイン(二塁手)も受賞し、広島でプレーする兄(広輔)に続くプロ入りを狙う
日本選手権対象のJABA大会が要項見直し
そして、苦しい現状を突きつけられたチームがあることも忘れてはならない。17年は三菱重工業スポーツ部門の再編に伴い、三菱重工長崎が活動を休止。チームは三菱日立パワーシステムズ横浜と統合されることが決定した。また会社の経営不振により、JR北海道がクラブチームとして活動することも発表された。
これらの事態も踏まえ、日本選手権の対象であるJABA大会は開催要項を見直し。6月に行われていた北海道大会が5月の東北大会に統合され、北海道大会優勝チームに充てられていた日本選手権出場枠1は近畿地区へ(従来の4枠から5枠へ増加)。さらに参加12チームで行われていた日立市長杯、長野大会、ベーブルース杯がほかと同じ16チームで統一。これですべての日本選手権対象大会が4チーム×4グループのリーグ戦となり、リーグ2位ワイルドカードによる決勝トーナメント進出がなくなった。
最後にドラフトという観点で言うと、注目は右腕ならヤマハ・鈴木、左腕ならJR東日本・
田嶋大樹(佐野日大高)が双璧。名前を挙げていない中ではJXの
柏原史陽(同大)や
齋藤俊介(立大)、東芝・
善武士(多良木高)、三菱日立パワーシステムズ横浜・
大野亨輔(専大)、ホンダ・
永野将司(九州国際大)、西濃運輸・
嶽野雄貴(名古屋学院大)、東邦ガス・
田中空良(豊川高)、西部ガス・
花城直(亜大)や
村田健(東農大)。野手ではJX・
谷田成吾(慶大)、JR東日本・
丸子達也(早大)らが挙がる。