
※成績は4月10日現在、写真=大泉謙也
グッと精悍さが増して見えるのは、丸刈りにしたからだけではない。この春、第4回WBCで日の丸を背負い、世界と戦った
小林誠司の表情には、自信が漲っている。
「WBCでは、なかなかできない経験をさせてもらいました。この経験を成長につなげていきたいです。ただWBCはもう終わり。(今度は)リーグ優勝、そして何としても日本一になりたい。いまはもう、その気持ちしかありません」
巨人は開幕から5連勝スタート。3カード目の
阪神戦[甲子園]こそ1勝1敗(1試合の雨天中止)としたが、8戦を終えて6勝2敗の2位と好位置につける。特筆すべきはチーム防御率で、2.57はリーグトップ。まだ対戦がひと回りしていない段階とはいえ、昨季は同3.45と苦しんだのだから、ディフェンス面の充実こそが、好調の要因に挙げられる。これには層の分厚い投手陣の奮闘はもちろん、全試合先発マスクをかぶり、彼らをリードする捕手・小林の存在も無視することはできない。
「長いシーズンなので1試合、1試合の積み重ねだと考えています。まず目の前の試合に勝てるように、考えながらやっていきます」
WBCを経て、取り巻く環境が劇的に変わった。昨秋に行われたメキシコ、オランダとの侍ジャパン強化試合では、目前に迫ったWBCについて問われても「いや、僕は……」と招集されること自体、否定的だったことがウソのよう。確かに2月23日の直前合宿スタート時点では、
嶋基宏(
楽天)、
大野奨太(
日本ハム)に次ぐ3番手捕手の位置付け。ただ、ここから評価はうなぎ登りだった。
長年、侍ジャパンのキャプテンを務めてきた嶋の故障離脱もあり、練習試合等への出場機会を得ると、「ディフェンス面では安定感がある」と
小久保裕紀監督の心をつかむ。周囲の見る目を一変させるきっかけとなったのは、“声掛け”だろう。1次ラウンド第2戦・オーストラリア戦の5回、一死満塁で浮足立つマウンド上の
岡田俊哉の下に駆け寄って言葉を掛けたシーンが、この大会の1つのハイライト。冷静さを取り戻した岡田がこれを抑えたことで、絶妙な間合いでタイムを要求した小林の判断が絶賛された。その後の活躍はご存じのとおり。意外性のある打撃も披露し、ドジャー・スタジアムでの準決勝まで全7試合で打率はチームトップの.450、1本塁打、6打点。幾度となく攻守で良い流れを呼び込み、1次ラウンド突破さえ危ぶまれたチームの準決勝進出を支えた。
これらの活躍に「事前の準備の賜物」とうなずくのが日本代表でもバッテリーコーチを務めた
村田善則コーチだ。小林はプロ1年目(14年)は全試合一軍に帯同したものの、2年目の大半を二軍暮らし。3年目の昨季は
阿部慎之助の一塁専念もあり、12球団で唯一規定打席に到達した捕手となったものの、数多くの課題を残し、チームも2年連続のV逸。このオフ、阿部のグアム自主トレに志願して弟子入りしたのも・・・
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