この春、日本中の注目を集めた男だ。3月に開催された第4回WBCで、侍ジャパンの正捕手を務めて一躍脚光を浴びる。まだ巨人でもポジションの保証がない状況だったが、初めての国際舞台7試合で飛躍的な成長を遂げた。“非日常の世界”で得難い経験をした小林誠司が思い描く理想の捕手像に迫ろう。 取材・構成=坂本匠、写真=小山真司、BBM 4年後に世界一のカギはフォーシームとタテ変化
第4回WBC出場を経て、自身を取り巻く環境が一変したことに、驚きを隠せなかったという。小林誠司にとって、当初は侍ジャパンへの招集すら「予想外のこと」だったというのだから、それも仕方がない。さらに2月23日からの強化合宿時点での評価は、嶋基宏(楽天)、大野奨太(日本ハム)に次ぐ第3捕手。それも当然ととらえていた小林だったが、嶋の離脱、強化試合でのアピールにより小久保裕紀監督のファーストチョイスに。大会開幕後は負けられない試合が続く中、当初は少しだけ危うい雰囲気を漂わせながらも投手陣を懸命にリードする姿がクローズアップされるとともに、準決勝進出を支える救世主となった。捕手としても「貴重な経験」と語る、WBCについて、振り返ってもらおう。 ──WBC終了から約1週間後のペナントレース開幕となりましたが、巨人は開幕5連勝でスタート。7カードを終えて完封勝利が3、貯金3、防御率2.83はリーグトップの成績です。(4月23日時点)
小林 連敗はありましたが、守り勝つ試合が多いですし、良い状態をキープできていると思います。負けは反省して、次に生かせればいいと思いますし、切り替えていくことも大事かなと。ただ、やっぱり
広島は勢いに乗せるとこわい。打線も良いですし、しっかり考えてやらないといけないなと、あらためて感じました。
──広島は昨年のセ・リーグ王者です。チームが3年ぶりのV奪回を目指す上では、直接対決(※16年は12勝13敗)がカギを握るのではないですか。
小林 そうですね。こちらは挑戦者ですし、まだ1カード対戦しただけですので、どんどん攻めていこうと思っています。
──3月の第4回WBCを準決勝まで戦い抜いて、休みなしで開幕を迎えています。その影響を感じていますか。
小林 疲れとか、コンディション面で悪い影響はないのかなと。逆にWBCでは7試合、先発で使っていただいて、貴重な経験をさせてもらいました。出場機会がないことも覚悟していたので、逆にプラスにしないといけない。あの独特の緊張感の中で日本を背負ってプレーさせてもらえること自体、なかなかないことです。今まで経験したことのないプレッシャーと、日の丸の重みを感じていました。
──大会期間中に体重も激減したとか。
小林 7~8キロですかね。正直、試合に出られるとは思ってもいなかったので。ただ、出たときに何かの役に立てるようにと、体の準備、心の準備をして、本番をシミュレーションしながら合宿を過ごしていました。大会を終えて、気持ちの部分で強くなれたかなと思います。
──嶋、大野、追加招集の
炭谷銀仁朗(
西武)などのベテランの捕手から刺激を受けることも多かったのではないですか。
小林 捕手でしか分からないこともたくさんあるので、合宿期間から大会本番もこの場面はああですよね、こうですよねと。別のチームの投手と組む機会がほとんどですから、そういう投手の引き出し方も聞けて、自分の発想とは違う新しい発見もあって、「なるほど」と思うことが多かったですね。勉強になりましたし、大会を戦っていく上で銀仁朗さん、大野さんの存在が心強かったです。
──合宿スタートから1次ラウンド初戦のキューバ戦まで13日という短い準備期間で本番を迎えることは、捕手として難しかったのではないですか。
小林 そうですね。性格とか、例えばピンチなら向かってくるのか、冷静なのかなど、いろいろと知らないといけないので。強化試合は試す段階だったのですが、3敗してしまって、日の丸を背負う以上はしっかりやらないといけないなと。
──ペナントレースで戦うのとでは、リード・配球は異なるものですか。
小林 球数制限とかは考えていなかったですけど、WBCは短期決戦なので、良い投手がそろっていますし、その投手の一番良いボールで勝負するように心掛けました。相手データも頭の中に入れていましたけど、それはピンチの場面、困った場面で参考にした程度。それが良い方向に行ってくれたと思います。
──準決勝のアメリカ戦[ドジャースタジアム]は1対2で負けはしましたが、メジャー・リーガーをそろえた打線に被安打6。緊迫したゲームを演出しました。
小林 相手の名前を見たくなかったです。だって、スタントン(マーリンズ)が八番ですよ。でも、前の夜に先発の智之(
菅野智之)と話をして・・・
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