日本球界全体でレギュラー捕手不在、そして世代交代の過渡期にあるが、彼らが投手の信頼を得て、結果を残すにはどうすればよいのか。ここでは16年の現役生活でロッテを2度の日本一に導き、日本代表でも第1回WBC優勝など、輝かしい実績を残した里崎智也氏に、投手陣をリードする際、“グラウンドに立つ前に最低限なすべきこと”を実体験をもとに語ってもらった。 取材・構成=坂本匠、写真=BBM リードに正解はなし
捕手とリードは切っても切り離せないキーワードです。そのリードの良し悪しについて質問される機会も多いのですが、「リードは結果論でしかない」が私の持論。簡単に答えられるものでもありません。そもそも、プロ野球で16年、8歳から野球を始めて32年、“良いリードの定義”を聞いたことがないんです。仮に「リードが良い」と言われる捕手がいても、投手の力量やその日の状態、対戦相手によって悪い結果が出ることもありますし、連敗することもあります。「リードが良い捕手」であるはずなのに、です。これだけでも“良いリード”の基準がいかにあいまいに捉えられているか、分かっていただけると思います。
ちなみに、完封勝利を達成して、「この捕手のリードは0点だったけど、投手の力量だけで完封できたな」という話を聞いたことがないですし、逆に10点取られて試合に負けても、「捕手のリードは完ぺきだったけど、投手が応えられなかったね」もありません。つまり、世に語られる客観的な「リードの良し悪し」は、結局のところ、1試合の中で相手打者1人、1人と繰り返される駆け引きの末に、チームの勝利に結びついているかどうかの、結果でしかないということです。
120人の80%情報把握
「リードは結果論でしかない」とは言っても、捕手が学ぶことで、良い結果に導く可能性を高めることは十分に可能です。その第一歩が相手と味方を知ることでしょう。
私は現役時代、パ・リーグ対戦球団5球団に関しては一軍半まで、交流戦や日本シリーズで当たるセ・リーグ6球団に関してはレギュラークラスのみ、合わせて約120人の打撃傾向を頭の中に入れていました。例えばカウント別での対応や打球方向、コース別成績、長所、短所、クセ、調子がいいとき、悪いときの違い、自チームの投手別のデータなどで、これらの情報を100%とは言わないまでも、80%についてはいつ何時、どんな状況で質問されても、答えられるように準備していました。極端な話、睡眠中にたたき起こされ・・・
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