われわれは新たな時代の到来を目にしているのかもしれない。多くの若手が台頭するチームの中でも、とりわけ果てしない才能と未来を感じさせる鈴木誠也。期待の若手から不動の打線の中心へ。驚異の成長曲線を描く背番号51から目が離せない。 写真=前島進 
四番・右翼がすっかり板についてきた鈴木。5月7日現在の今季成績は33試合で打率.310、5本塁打22打点4盗塁。今季はどれほどの数字を残すことができるだろうか
成長を引き出した数多くの試行錯誤
悔しがる。考える。トライする。そのプロセスが見えるからこそ、鈴木誠也の練習からは濃密な空気が感じられる。2016年は打率.335、29本塁打、95打点の活躍でリーグ優勝の原動力となったが、あくまで昨シーズンの自分は追い求めない。ただ着実に自らの技術を積み上げようとしている。
周囲からの期待値のハードルは高くなる。相手チームの攻めも厳しくなる。WBCメンバーにも選出され、早めに仕上げる必要もあった。なかなか開幕から絶好調とはいかない。しかし、その中からも首脳陣はさらなる成長を感じていた。
東出輝裕一軍打撃コーチは語る。
「いいときの自分を追い求めるのではなく、(新たな)試行錯誤をしているように感じます。しっくりきている部分もあれば、探り過ぎているところもあります。去年、バットの使い方のレベルは格段に上がりました。バッターは、それが試合で出せるかどうかです。そういった意味では、(開幕当初のように)状態が良くない中でもヒットが出ているのが今年の成長だと思います」
課題から逃げない。結果オーライではない。だからこそ、鈴木の成長曲線は急カーブを描いてきた。高卒1年目からウエスタン・リーグで打率.281をマークした。ルーキーとしては申し分ない成績だったが、鈴木は一つひとつの課題と真正面から向き合った。このことが、さらなる進化につながった。入団当時の鈴木を知る
森笠繁二軍打撃コーチの話が興味深い。
「(鈴木には)体の強さやバットを振る力がありました。ただ、ポイントが体に近いほうだったので詰まることが多かったように思います。それでも、力があるので詰まってもヒットにはなっていました」
修正して少しポイントを前にすると、体が開きやすくなる。この相反する要素も工夫と反復練習でクリアしていった。人一倍の練習量は誰もが認めるところであった。
「気持ちが入ると力んでしまう。特に、右手の力を抜くように」と森笠らコーチ陣は助言を繰り返した。その要素も時間をかけながらクリアしていった。
2年目には一軍で22安打、3年目は58安打、そして昨シーズンの・・・
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