ここからはトライアウトを受けた選手たちの声を聞いていきたい。まずは中日で20歳で2ケタ勝利を挙げた実績を持つ若松駿太。苦悩の時を過ごす中で受けた戦力外通告。だがある答えを探すため、まだまだ現役を続けたい気持ちがあった。 文=小西亮 写真=榎本郁也 
実家の近くにあるタマスタ筑後のマウンドに上がった若松。2ケタ勝利ができた理由を探すため、来季も現役にこだわり続ける
伝家の宝刀で3人を7球締め
外は本降りの雨。体感で10度を切りそうな底冷えに、冬の訪れを嫌でも感じる。トライアウトを翌日に控えた11月12日の朝、若松駿太は地元の福岡県久留米市にいた。祐誠高の先輩が開く野球塾の室内練習場で、努めて明るい表情とは裏腹な本音がのぞく。
「僕、緊張しているんですかね? 昨日の夜、トライアウトの夢を見ちゃって。マウンドで投げようと思って足を上げたらコケたっす(笑)。そこで目が覚めました」
重圧を感じたのは一軍初登板くらい。そんな強心臓にとって異質な感情を振り払うように言う。
「いつもどおりでいきます」
数日前に分かっていた対戦打者も、積極的に耳に入れようとはしなかった。
節目の登板は、ふるさとで迎えた。会場のタマスタ筑後は、実家から20キロ弱。ともすれば悲壮感漂うトライアウトだが、湿っぽいのはめっぽう嫌い。多くのユニフォームが入り混じるロッカーでは、同世代の元
巨人の
辻東倫らとざっくばらんに話した。
「なんでクビになった・・・
この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。
まずは体験!登録後7日間無料
登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。
登録済みの方はこちらからログイン