2017年の首位打者であり、2年連続3割をマークしベイ打線の看板スラッガーが開幕直後、極度の不振に陥った。後半戦に入り、ようやく本来の姿に戻りつつあるが、芸術的とも言える打撃の持ち主の内部に、何が起きていたのか。 文=石塚隆、写真=井田新輔 
宮崎のバットから快音が響き始めるのに合わせて、チームの調子も上向いてきた。6月29日の広島戦[横浜]では、延長10回にサヨナラ打を放った
それは“河原の石積み”のようなものだという。いびつな形の石を絶妙なバランスで積み上げる。点と点とで成り立つ、ここしかないといった均衡。だが数ミリでもポイントがずれれば、石はあっけなく瓦解する。
宮崎敏郎のバッティングには、そんな微細な感覚が必要なのだという。
「連動する独特なバッティングなので、一つ目がつまずくと、二つ目、三つ目がずれてしまう。そこを一つずつ修正して積み上げていかなければならず、最初はなかなか解消することができませんでした。問題点を見つけるのも遅かったし、それで時間が掛かってしまった……」
春先の自分を宮崎は振り返った。
極度の不振だった。3、4月の月間打率は.165。レギュラーとなって初めての大スランプ。ただ三振の数は少なく、ボールの見極めはできていたが、ヒットポイントがずれ凡打を繰り返した。
調子の上がらぬ宮崎に周囲からはいくつもアドバイスが届くが、それが混乱に拍車をかけたのではないか。「いや、あまり聞いていませんでしたね」と、宮崎は笑った。
「ただ・・・
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