ここでは公立校をけん引した逸材を紹介する。惜しくも甲子園出場は逃したが、10月17日のドラフト会議での指名を待ち、次のステージでの飛躍を誓う。 取材・文・写真=沢井史 
福井県の県立校・丹生(にゅう)高は春夏を通じて甲子園出場経験はない。今夏はこの147キロ左腕を擁して福井大会準優勝、快進撃の立役者となった
2016年秋。中学3年生だった
玉村昇悟は、テレビにクギ付け。ドラフト会議で
今井達也(作新学院高→
西武)、
藤平尚真(横浜高→
楽天)らが1位指名を受けた。取材を受ける高校生を見て、胸の高鳴りを抑えることができなかった。
「自分もこうやってドラフトで指名されて、自分の高校の名前を全国に広められたらいいな、と」
すでに地元の県立校・丹生(にゅう)高に進学することを決意していた玉村は、華やかな場に立つ投手の姿を、自分の未来と重ね合わせていた。
春木竜一監督は、中学3年時の玉村を見て「腕の使い方が良い。高校で伸びれば140キロくらい出る左腕になるかもしれない」と直感した。入学直後の1年春の県大会でベンチ入り。同秋には背番号1を着けた。玉村の類(たぐ)いまれなセンスを指揮官は早くから見抜き、実戦登板を徐々に増やしながらも、体づくりを同時に進めていた。
逆立ちやバランスボールを使った体幹トレーニングだけでなく、“地の利”を生かした体づくりも行った。丹生高の正門にたどり着くまでには、急勾配の坂を登り切らなければならない。左右に伸びる坂は最大斜度で20度。距離にして200メートルほどある。その坂道をショートカットする形で、階段のある遊歩道でダッシュすることも。玉村はその過酷な走り込みを毎朝・・・
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