新型コロナウイルスの感染拡大を受け、大学球界もリーグ戦の延期、中止が相次いでいる。東京六大学は5月末の開幕を目指しているが、不透明な状況だ。今春からエース番号「18」を背負うはずだった155キロ右腕もじっと我慢のときを過ごしている。 取材・文=佐伯要 写真=菅原淳 
昨年11月の明治神宮大会準決勝[対城西国際大]では5回1失点の好投。19年ぶりの優勝に貢献している
「アレ? どうやって投げていたんだっけ……」
慶大の155キロ右腕・
木澤尚文には一度、投球の感覚を忘れてしまった経験がある。
高校時代から最速143キロを計測していたが、3年春の神奈川大会準決勝(対横浜高)で右ヒジ内側じん帯を損傷した。同夏の神奈川大会でも本来の投球ができない中、2試合に登板。その後も手術はせず、慶大進学後はリハビリに明け暮れた。
1年秋になって、ようやくキャッチボールを再開する。ところが、球がどこへ飛んでいくか、自分でも分からないような状態だった。
「高校では感覚だけで投げていました。ただ思い切り腕を振って、なんとなく強い球がいっていただけ。投げ方が分かっていなかったんですね」。木澤は苦笑いで振り返る。
そこからは単なるケガからの復帰というより、ゼロからの再出発。家にたとえるなら、建物を修繕するのではなく、いったん更地にして、新たに設計図を書き、基礎工事から建て直すような作業になった。
その支えになったのが・・・
この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。
まずは体験!登録後7日間無料
登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。
登録済みの方はこちらからログイン