23歳右腕の圧倒的な成績を振り返らなくては、2021年シーズンの記録集計は始まらない。球団新記録となる個人15連勝を飾り、最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、さらには沢村賞と投手タイトルを総なめ。オリックス・山本由伸の快投が続いたが、背番号18は、なぜ負けなかったのか──。データと記録から“快投乱麻”をひも解いていこう。 写真=佐藤真一、BBM 
試合中に笑顔を見せ、成績に加えて、表情からも“無双”ぶりが表れる
2つの側面
圧倒的な数字を残してタイトルを総なめ。最多勝、最優秀防御率、勝率第一位、最多奪三振の“投手主要4冠”は2006年の
ソフトバンク・
斉藤和巳以来15年ぶり史上9人目の快挙となった。通算400勝投手の
金田正一(国鉄ほか)、同300勝投手の
鈴木啓示(近鉄)や、24勝0敗を記録した13年の
楽天・
田中将大も成し得なかった“4冠”に加え、リーグトップの成績は、ざっと数えても14項目ある[下画像]。
2021シーズン、リーグトップの成績 
※QS=6回以上登板かつ自責点3以内
WHIP=1イニングあたりに許した走者の人数
各項目は規定投球回到達者の中でトップ、最少
これだけの数字を残せば個人15連勝もうなずけるが、19年にも防御率1.95、120試合制だった20年も149奪三振でともにタイトルを獲得したものの両年とも8勝どまり。これがキャリアハイの勝ち星だった。さらに21年も5月中旬まで3勝5敗と負け越していた山本由伸が、なぜ白星を重ねられるようになったのか。そして、負けない理由は、どこにあるのか──。21年のレギュラーシーズン26試合登板での数字を集計して見ると、2つの側面が見えてくる。
1つは、そもそも投手としての力だ。投じるボールは最速158キロと、日本人投手ではトップクラスの球威。20年から奪三振率が向上した中で「真っすぐの質が上げられた。空振りも取れるし、ファウルでカウントも取れたので」と本人も口にするように“球威”が投球の大きな柱なのは、21年に投じた全2911球のうち約39%にあたる1155球がストレートだったことが物語る。
とはいえ、一流打者を球速だけで封じられるほどプロの世界は甘くはない。3球に1球はストレートならば、狙いを定めて打てばいいが、そうさせないのが変化球だ。特にスピードがあり、微妙に動く2つの球種が相乗効果を生んでいる。下記の【データ1】のとおり、平均球速は軒並み150キロに迫るスピードボールがズラリ。中でも・・・
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