過去7度の都市対抗制覇を誇る社会人野球の名門・東芝。大卒2年目の本格派右腕が2021年のエースとして期待されている。拾ってもらった会社に恩返しをした上で、2度目のドラフト解禁を迎えるつもりだ。 取材・文=岡本朋祐 写真=小山真司 
神奈川県横浜市内にある東芝総合グラウンド。入社1年目の昨年の自粛期間中は、この活動拠点で自身を見つめ直す有意義な時間を過ごした
プレートから本塁まで18.44メートルの空間をいかに、うまく活用するか。
吉村貢司郎が最も意識しているのは「腕の振りを一定にすることです」と語る。いくらストレートが気持ち良く投げられたとしても、変化球を投じる際に右腕が緩んでしまえば、打者に見極められてしまうからだ。
2021年の東芝投手陣の合言葉は「先発完投」。1試合を投げ切る投手を一人でも増やすことをテーマにしている。東芝は4月のJABA四国大会を制し、優勝チームに与えられる日本選手権出場(6月29日開幕)の権利を得た。セガサミーとの準決勝では吉村が3失点完投すると、NTT西日本との決勝で横浜商大出身の新人左腕・
藤村哲之が8回1失点。就任4年目の平馬淳監督が、ほぼ思い描いたとおりの展開となった。
入社2年目の吉村にとって、同大会の準決勝で1試合を投げ切るのは、オープン戦を通じても「社会人初完投」だった。試合終盤も球威、スピードとも衰えることはなく、昨年の都市対抗で4強に進出したセガサミー打線から14奪三振。その内訳は空振り三振が12個という数字からも、冒頭の「腕の振りを一定にする」という持ち味を発揮したのだった。追い込んでからのフォーク、スライダーだけでなく、分かっていてもバットが空を切るストレートでも圧倒した。変化球はこのほかカーブ、カットボールを持っており、すべての球種で勝負できるのが強みだ。
「9回を投げたのは、自信になりました。マウンドを託された以上は、強気の投球で、勝利にこだわる」
ノーワインドアップから軸足でしっかりと立ち、下半身へスムーズに体重移動するバランスの良さは・・・
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