大会最多記録を更新する6本塁打、17打点。2017年の夏、準優勝した広陵(広島)の中村奨成は、「振れば長打」という状態だった。大会史に名を残す猛打。しかしそれは、同時に重い荷物を背負うことでもあった。 取材・構成=藤本泰祐 写真=BBM 中村奨成[広陵高2015~17/現・広島]

3回戦の聖光学院戦の9回表、4対4の同点から決勝2ランを放つ中村奨。この大会で放った6本の中でもっとも印象に残る一撃だという
【甲子園成績】3年夏準優勝 頑張りが残ったことは喜び
約50試合の、一発勝負のトーナメントに、全国のファンの注目が集まる夏の甲子園。それだけに、そこで残された結果は、ファンの脳裏に、必要以上に、と言っていいほど強烈に焼き付いてしまう。他方、その前にある選手たちの約2年半の地道な努力の日々は、ほとんどファンの目に触れることもない。「甲子園だけが特別、ということではなく、高校野球の価値は、3年間の毎日にある」。それは、過去に大会に出場した誰よりも多くホームランを放つという、燦然(さんぜん)と輝く記録を作ったその裏で、一人歩きする結果の重さに苦しんできた男だからこその言葉なのかもしれない。 ◎
なぜ、あの夏、あんなに打つことができたのか──。それは自分でもよく分かりません。あのときはとにかく、チーム全員で優勝を目指して、1試合、1試合をしっかりと戦っていこうという気持ちだけでしたので。あえて言えば、その中で、打席での集中力が高まっていった結果なのかなと思います。
ホームランなどの記録については、何本が最多記録かということも知りませんでしたし、別に個人記録を目標としてやっていたわけでもありませんので、意識はありませんでした。ですから新記録となる6本目を打ったとき(準決勝の奈良・天理戦)も特には……。
6本の中で一番印象に残っているのは、4本目ですかね(3回戦、福島・聖光学院戦)。同点で、ピッチャーも頑張っている中で、9回に打つことができましたから(決勝2ラン)。打ったのはストレートでしたね。やっぱり、チームの勝利のために一番大事な場面で打てたので、その1本が印象に残っています。
夏の甲子園のホームランの大会記録を作れたことについては・・・
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