北の大地で生まれ育ったサウスポーには、絶対的な変化球がある。マウンドで、これほどの強い味方はない。今春、夏の甲子園で白星は挙げられなかったが、強烈な記憶を残した。 取材・文=岡本朋祐 写真=早浪章弘、牛島寿人 
「大成」の由来は「大きく成長してほしい」と「大事を成す」との思いから名付けられた。好きな言葉は「冬は必ず春となる」。我慢すれば、道は開けると信じて取り組んできた[写真提供=北海高等学校野球部]
ものすごいブレーキが利き、グイっと曲がる。
木村大成のスライダーは、対左打者には外角へと逃げて、対右打者には、ヒザ元を厳しく突く厄介な変化球だ。北海高は春、夏の甲子園とも神戸国際大付高(兵庫)に1点差で惜敗。しかし、ネット裏のNPBスカウトが視察するのは「結果」よりも「投球内容」である。
「分かっていても、打てない」
「高校生で攻略するのは、難しい」
複数の球団幹部から聞いた評価だ。打席からは「消える」ように見える“魔球”は、真っすぐより腕を強く振る意識だ。肩関節の柔軟性に優れていることから、打者からすれば、ボールの出どころが見えづらい。今夏の南北海道大会1回戦(対苫小牧中央高)では自己最速を2キロ更新する150キロを計測したが、満足はできなかった。
「150キロを出した、という実感はありませんでした。いくらスピードが出たとしても、回転数を上げていかないと、空振りは取れない。ボールのキレを大事にしています」。大学球界では「140キロ2300回転」が一流レベルと言われている中で、木村のアベレージは2300回転で、最高2400回転。スライダーは2700回転と数値からも高いポテンシャルを示している。
「自分にとってスライダーとは・・・
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