人生、山あり谷あり。その中で信念を貫くことは、容易なことではない。一生懸命に、プロの選手として、野球に向き合い続けた15年間。ブレずにやってきたからこそ、最後の一瞬まで自分らしくいられるのだ。※長谷川の引退試合&セレモニーに関してはこちら 文=菅原梨恵 
すがすがしい長谷川の表情が、本当に悔いのないラストだったことを物語っていた [C]SoftBank HAWKS
両者一歩も譲らず、0対0で迎えた7回。一死二塁のチャンスで、出番は訪れた。10月21日の
日本ハム戦(PayPayドーム)。
長谷川勇也、現役最後の打席は、引退者ゆえに用意されたものではなく、「決めてこい!」という戦力としての送り出し。その意図は、長谷川にもしっかりと伝わっていた。
「しびれる場面での代打。自分の最後の打席で安打を打とうというより、この試合にけりをつけたかった」
1ボール2ストライクと追い込まれて迎えた4球目、打球は一塁方向へと飛んだ。
一瞬、ああ……と思った。しかし、そのああ……は、すぐに「ああ!」に変わった。全力で一塁に向かって走っていた長谷川がヘッドスライディングを見せたからだ。パフォーマンスではなく、本当に一か八かの、闘志むき出しのプレー。判定はギリギリのところでアウトとなった。
天井を見つめながら息を整える長谷川に、球場からは大きな拍手が送られる。立ち上がると、悔しさを隠し切れない様子で仲間の待つベンチへ。そのユニフォームは泥だらけだ。戻るとレガースをたたきつけ、感情をあらわにした。目に涙はない。
長谷川勇也らしい――。一挙手一投足、すべてが長谷川勇也らしかった。そして、ふと思った。この数週間、何度この“長谷川らしさ”を感じてきたことだろう、と。
10月8日11時に球団から届いたリリース。内容は『長谷川勇也選手の引退について』だった。2007年に入団し・・・
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