全国12地区で行われた二次予選でも、東海地区は約3週間の長丁場だ。参加14チームから出場6枠。この激戦区で4連勝、2年連続での第1代表の座をつかんだ実力は本物だ。前回優勝は1990年。32年ぶりの黒獅子旗を狙える戦力が整っている。 
チームスローガンは「挑戦~更なる高みへ~」。2年連続での第1代表と士気は高まっている
激戦の東海地区で近年、ヤマハは圧倒的な存在感を示している。2019年の都市対抗二次予選では4連勝で第1代表を獲得。翌20年は初戦で敗れた直後の4連勝で第3代表。そして、昨年と今年がともに第1代表。過去4年で16勝1敗は驚異的な数字だ。
うまく回っている要因を室田信正監督(名城大)は「最も大きいのは選手のメンタル面の成長」だと話す。「もともと個々の能力は高いと思いますが、私が就任したのは18年7月。16年秋の日本選手権で優勝しながらも17年、18年と2年連続で都市対抗出場を逃し、選手たちが自信をなくしていた時期なんです。当時はどうしても後ろ向きと言うか、試合で少し劣勢になると元気がなくなり、また負けるんじゃないかという雰囲気になっていました。だから就任後から言い続けてきたのは『全員で野球をやろう』ということ。誰かがミスしても誰かがカバーすればいい。全員が最後まで諦めずにやるべきことをやって、それで負けたら仕方ないと。雰囲気づくりにはこだわってきて、だいぶ浸透してきましたね」
なるほど、チーム内では普段から「切り替え!」「仕方ない!」「次!」といったワードが頻繁に飛び交っている。また都市対抗予選では、勝っても負けてもミーティングをせず「さっさと帰ります(笑)」。東海地区二次予選は3週間近くの長丁場。だからこそ「いかに早く切り替え、嫌な緊張感や不安を捨てて次に臨めるかが大事」と指揮官は言う。
昨年までの流れを見ても、チームが旬を迎えつつあることは明らかだ。スタッフ総入れ替えの19年は4月の
富山大会でクラブチームに完封負けを喫するなど苦しいスタートだったが、明るく元気に引っ張る存在として主将に指名された矢幡勇人(専大)を中心にまとまり、秋の日本選手権で8強。20年の都市対抗1回戦では日立製作所に9対0と快勝して復活を印象づけた。21年には「今度は『チームの顔』を柱にしたい」(室田監督)との意向で前野幹博(PL学園高)が主将へ。内野手から外野手への転向で守備が著しく上達し、それに伴って打撃の集中力も向上。高卒の大型野手として注目を浴びてきた主砲が20代後半になり、脂が乗ってきた。また19年に
DeNAから加入した
網谷圭将(千葉英和高)に続き、昨年は三菱重工名古屋から秋利雄佑(カリフォルニア州立大)が転籍。打線の厚みはグンと増して静岡大会準優勝、岡山大会4強、東北大会優勝と春先から勢いに乗った。
スタッフの陣容も心強い。長らく四番を担った元
ヤクルトの佐藤二朗コーチ(ワシントン・ルイス州立高)が攻撃、指揮官が「現役時代は中軸を打ちながらも外野守備への意識が高かった」と評する長谷川雄一コーチ(近大)が守備、都市対抗10年連続出場を果たすなど経験豊富な捕手としてチームを支えた松尾知之コーチ(立命大)がバッテリーを担当。今季は投手コーチが不在のためベテラン左腕・九谷青孝(東農大)が選手兼任となるが、「各部門にスペシャリストがいて安心して任せられる。逆に私は余計な口出しをしないほうがいいですね」と室田監督は笑みを浮かべる。さらに昨年にはアナライザーも新設し、元内野手の辻本一磨(東北福祉大)が就任。選手の要望に合わせてデータを基にした助言をしており・・・
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