ずっと、このときを待ち望んでいた。メジャー・リーグでプレーするために、前に進んできた。心に大きな地図を広げ、たどり着いた夢の舞台。千賀滉大の新たな物語が、ここから始まる。 取材・構成=菅原梨恵 写真=小山真司、BBM 
千賀滉大(投手/ソフトバンク→メッツ) [写真=共同通信/Getty Images]
焦る気持ちを抑えて
昨年12月19日(日本時間20日)に行われた入団会見で、右腕は満面の笑みを浮かべていた。その表情がすべてだった。メジャー・リーグ挑戦を言葉にするようになって5年強。2022年シーズン中に取得した海外FA権を迷うことなく行使し、誕生したメッツ・千賀滉大。夢はついに現実となったのだ。 ──現在シアトルで自主トレ中とのことですが、今後の予定は?
千賀 もう一度日本に帰って最後の準備をして、スプリングトレーニングでフロリダに入ります。
──日本を離れることになって寂しい気持ちもありますか。
千賀 やっぱりいろいろな人に会えなくなったり、福岡のご飯が食べられなくなったりというところでは、思うことも結構多かったですね。
──年が明け、いよいよメジャー1年目が始まるわけですが、今の率直な心境、千賀投手の胸の内を教えてください。
千賀 ワクワク100パーセントですよ! 不安とかはないです。いや、やっぱり99パーセントにしておこうかな。福岡のご飯と離れる寂しさが1パーセントで。
──福岡はおいしいものがたくさんありますからね。アメリカの食事はどうですか。合いそうですか。
千賀 どうですかね。そもそも、アメリカのご飯って何なんだろう。結局いろいろなものがありますし、あとは何でもチャレンジしようかなとは思っています。
──本拠地がニューヨークですし、確かに何でもありそうです。ただ、アメリカでの生活のために、苦手だったトマトは克服されたとか。
千賀 そうなんですよ! 食べられなかったんですけど、アメリカってどこにでもトマトが入っているイメージ。だから、何を食べても大丈夫なように、頑張って口にできるようになりました。
──ケチャップもダメだった?
千賀 いや、ケチャップは大丈夫だったんですけど、ミネストローネは無理でした。僕クラスのトマト嫌いはあの匂いで、(PayPay)ドームでミネストローネの日は駐車場で車を降りたときから分かってました。それぐらい苦手だったんですけど、今は料理に入っていても何とか食べられるくらいにはなりましたね。
──それほどまでに強い思いを抱いていたアメリカ、メジャーの舞台。意識するようになったきっかけは、2017年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)でしたよね。
千賀 強烈なインパクトを受けて、「ここでやりたい」「この中に自分が身を置いたら、どういうふうになっていくんだろう」という気持ちになりました。
──ただ、当時はまだ漠然と、将来的に行けたら、という程度だったと思います。それが「絶対にここでやってやる」と強い思いになったのはいつぐらいですか。
千賀 球団がポスティング(システム)を容認していないのは分かっていたので、いつか行けたらと長い目で見て余裕でいたんですけど、18年にふと「俺、このままだったらアメリカ行けないわ」と思って。それで、ダルさん(
ダルビッシュ有、パドレス)にお会いして、いろいろなお話を聞いたんです。自分の甘さだったりを痛感させられました。もっともっとやらないと、と思った。そこで余計に行きたくなったというか、目標が明確になった、というところはあると思います。
──そこから思いが年々強くなっていったわけですね。
千賀 年を重ねるごとに・・・
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