マウンドからリズム良く投げ込む小気味いいピッチングは軽やかだ。さらに鋭い腕の振りから繰り出されるストレートは重低音が響いているようだ。“音”を連想させる投球スタイルを持つ新人・武内夏暉。ドラフトで3球団が競合した実力をプロで発揮している左腕が感じている“野球の音”の世界とは――。 取材・構成=上岡真里江、小林光男 写真=BBM、斎藤豊(インタビュー) 
4月3日のオリックス戦[ベルーナ]でプロ初登板初先発初勝利。お立ち台に上がるとファンから温かい歓声が降り注いだ[左から炭谷銀仁朗、武内、アギラー]
自身のストレートを音で表すと「ズドン」
登場曲『仲間』(ケツメイシ)をバックにマウンドに上がるルーキー。福岡で育った少年時代、球場でメガホンを持って応援していた“イチプロ野球ファン”だったからこそ、ファンが感じ取る一つひとつのサウンドに対して敏感だ。立場が一転し、応援される側へと変わったルーキー左腕が感じる、プロ野球界ならではの“音”は興味深い。 ──野球で“音”と言えば、まず何をイメージしますか。
武内 応援歌ですかね。僕は地元が福岡で、子どものころはよく福岡ドーム(現・みずほPayPay)にプロ野球を見に行って、メガホンを鳴らして応援していたので、耳に残るというか、やはり気になります。プロに入って応援していただく立場になりましたが、今でも応援歌を聞くのは好きで、登板前にレフトスタンドの前でキャッチボールをしているとき、そのタイミングでスターティングメンバー発表があるので、スタンドの応援を間近で聞けるのがすごく好きなんです。
──
西武の応援は、どのような印象ですか。
武内 もちろん好きです! ライオンズの選手の応援歌は、結構いろいろと有名なので知っていました。個人的には、
外崎修汰さんとか
源田壮亮さんの応援歌が好きですね。あと、やはりライオンズの応援歌と言えば『チャンテ(チャンステーマ)4』ですよね! たまに、試合中にベンチの中にいても、打者を見るよりもレフトスタンドを見ちゃうときがあります。「すごい盛り上がってるな」って(笑)。
──他チームの選手の応援歌で、特に好きな歌とかありますか。
武内 千葉
ロッテの応援はすごいなと思いますね。ロッテの選手の歌も何人かは歌えますが、中でも好きなのは
荻野貴司選手の応援歌。この間のロッテ戦(4月10日、ベルーナ)でも、自分が投げているときに流れてて、実はちょっとうれしかったです(笑)。
──応援以外で、野球で“音”と言うと、「打球音」もあると思います。ただ、投手としては、やはり、あまり好きな音ではないですかね?
武内 そうですね。イヤですね。でも、プロに入って「音が一段違うな」とは感じています。まだそこまで登板数は多くはないですが、音が大きいというか、すごく響く感じ。なので、余計に「うわー、打たれたー」と感じます。でも、逆に詰まらせたときの音も大きいので、その音をこれからたくさん聞けるようにしていきたいです。
──ボールを投げて、捕手が受けたときの「捕球音」については感じることはありますか。
武内 ドーム球場が多いというのもあるかもしれないですが、打球音と同じく「響くな」と思いますし、良い音が響くと「気持ちいいな」と思います。で、実際、良い音が鳴ると気持ちが“アガる”というのはありますね。試合の日でも、自分的にはあんまり状態が良くないと思っていても、捕手の方が良いミット音を鳴らしてくれると、乗っていける感じがします。
──以前からキャッチボールも非常に大切にしていると話していますが、「捕球音」という意味では、キャッチボールの音も意識しますか。
武内 自分は結構気にしていますね。「(相手のグラブの音を)鳴らしたい!」と思って投げていますね。そっちのほうが僕も気持ちいいですし、だからこそ、相手も気持ちよく投げられるように、自分も鳴らしたいなと思って捕るようにしています。
──武内投手と言えば、なんと言っても質の良いストレートが一番の武器。その自慢の直球を“音”で表すと。
武内「ズドン」ですね。
──その心は?
武内「意外と・・・
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