スタジアムに彩りを与え、熱戦を引き立たせる音のプロフェッショナルたち。多彩な音と声で興奮と感動をアシストしている京セラドームの舞台裏にも、考え尽くされた計算があった。彼らの“音の流儀”に迫る。 取材・文=鶴田成秀 写真=宮原和也 
神戸佑輔
意識するフォルテの音
京セラドームの東側に流れる木津川に掛かる大正橋。音に秘められる想いをひも解けば、球場の外にたどり着く。
打球音や捕球音に選手の声にスタンドからの声援、応援団が奏でるトランペットに選手それぞれの想いが詰まった登場曲──。多種多様な音が球場を彩る中、音や声で万人単位の観衆の想いをひとつにしている一人がボイス・ナビゲーターを務める神戸佑輔さん。テノールとバスの中間域で、テノールのような繊細さとバスのようなどっしりした力強さを同時に持つ『バリトン』の声質は、ときに落ち着き、ときに臨場感を与えてくれる。そんな印象も、“使い分け”から成り立つもの。何気なく耳にする言葉の一つひとつに、“プロの技”が隠されている。
「早く話したり、ゆっくり話したりの『緩急』。あとは大きく言うのか、小さ目に言うのかの『声量』と、低いか高いのかの『高低』。この3つを意識して、自分なりに使い分けているんです」
そう語る神戸さんの仕事は、選手名を
コールするほか、ファウルボールの注意喚起や、イベント紹介などの場内アナウンスなど多岐にわたる。声で試合を先導するからこそ『ボイス・ナビゲーター』という肩書きは『スタジアムMC』と表現することもあるが、男性が1人で両役を担うのは、12球団で唯一だ。とはいえ、あくまで主役は選手であり、見守るファン。ゆえに球場の雰囲気を感じて声を発することが大事だと言う。
「1回表から9回裏のゲームセットまで最大の『10のテンション』でやるのではなく、一番盛り上がる場面で10に。それ以外は『緩急』『声量』『高低』などをあえて抑えるなど、8のテンションにしたりして。自分なりに1試合のバランスを考えるようにしているんです」
状況に応じて変わる雰囲気。緊張感が包むこともあれば、熱狂が渦巻くことともある。ガラス張りのアナウンス室から見える光景に加え・・・
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