昨年はアジア人初のメジャー本塁打王に輝いた大谷翔平。今年は本塁打にプラスして、打率でもハイアベレージをマークしている。進化した打撃の秘密は何か。しかし、そこに明確な答えがあるわけではない。本人の頭の中をのぞいてみると――。 文=石田雄太 写真=ゲッティイメージズ 
大谷が頭に思い描いている理想の打撃は一朝一夕で手に入れられるものではない
わずかの成長こそが進化の唯一無二の源
昨年、メジャーでホームラン王を獲った大谷翔平が今年もホームランを量産している。ドジャースへの移籍1年目であることを考えれば、それだけでも驚異的なことだ。しかし開幕して2カ月、大谷はホームラン数だけでなく、打率でもしばしばMLBのトップに立っている。しかも3割3分を超えるハイアベレージで……さらに安打数、二塁打数、出塁率、長打率、OPSと、いくつものバッティング部門においてトップを争っている。
なぜこんなに打てるのか。いったい何がよくなったのかと、毎年のように同じ議論が巻き起こる。そして数字をこねくり回して、もっともらしい理由を探してはあれこれと理由が語られる。
しかしそのどれもが、正しくないとは言わないが、すべてを言い当てているわけではないと考える。そして正解にもっとも近い答えがあるとしたら、それは目新しいものではないはずだ。なぜなら今の大谷は年ごとにほんのわずか、身体がイメージどおりに動くようになっている“だけ”……だからだ。この目に見えにくい進化の源に、特効薬など存在しない。そのほんのわずかの進化のおかげで、大谷はイメージどおりのスイング軌道をキープすることができるようになり、ボールを正確にとらえる確率が上がって、ボールに強い力を伝えることができている。つまり、こうだからこうなった、というひとつの答えがあるわけではないのだ。実際、大谷は以前、こう言っていた。
「何かができるようになったとき、これが、という分かりやすい理由はないと思っています。確かに、何かがいきなりできるようになることはたまにあるんですが、でもそれはコップに一滴ずつの水を地道に滴らせた、その積み重ねがあるからです。そうやって積み重ねてできるようになったことは、逆に簡単にできなくはなりません。いきなりポンと上がったわけではないので、その後も落ちることなく続くんだと思います」 そういうシンプルな理由で類い稀な結果を叩き出している大谷にとって、このほんのわずかの成長こそが進化の唯一無二の源なのだ。メジャーに挑戦する前、大谷はバッターとして目指す形について、すでにこんな話をしていた・・・
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