県内に身近なライバルがいた。侍ジャパンU-18代表に入った報徳学園高の151キロ右腕・今朝丸裕喜。3月に全国レベルの実力を見せつけられ、成長の糧としてきた。 取材・文=沢井史 写真=田中慎一郎 遠投115メートル。50メートル走6秒3。もともと捕手だったことから、体が頑丈である。パワーピッチングを持ち味としている
スカウト唸らせた夏初戦
高校生活最後の試合となった今夏の西宮今津高との兵庫大会3回戦。先発の2年生左腕・藤川大雅が3回無失点と力投するも、打線が追加点を奪えずにいた。神戸弘陵高が1対0とリードした4回表から登板した森下翔斗(3年)が、この回に3失点で逆転されると、エース・村上泰斗はたまらずブルペンへと走った。
「この日に登板する予定はなかったんですけれど、先が読めないゲーム展開になりそうだったので、これは『自分が何とかしないといけない』と思ったんです」
自身の判断だった。1点を追う8回表無死一、二塁からリリーフすると、3者連続三振でピンチを脱した。9回も3人で片付け、打者6人をパーフェクト。背番号1が気迫の投球で最終回の攻撃に望みを託したが、そのまま2対3で敗れた。
「あのときは正直、負けた実感はなかったんですけれど、甲子園で優勝しない限りはどこかで負けは来るので……。敗戦を受け入れる、というよりも、もともとの目標はプロへ行くこと。切り替えは割と早くできたほうなのかなと思います」
これまでは走者を出すと、力んでボールが抜け、カウントを悪くすることが大きな課題だった。昨秋、彩星工科高との3回戦では初回からテンポ良く三振を奪うも、長打を浴びてから連続四球で一気に崩れ、失点を重ねて敗戦した(1対4)。
しかし、この日は21球中、無駄球はほとんどなく、5奪三振、無四球と完璧な内容。今夏の飾磨工高との初戦(2回戦)では、2回裏に連続四球を与え「悪い癖が出てしまった」と猛省した。それでも試合中に修正し、7回裏には三者連続三振を奪い、9回一死まで無安打の快投を見せた。一死後、中堅前に落ちた当たりが初安打となり、そこから1失点も、堂々たる投球で、ネット裏で視察したNPB8球団のスカウトを唸らせた。
「立ち上がりからカーブと真っすぐで勝負しましたが、途中からカットボールも交ぜました。(初安打を許した)中前の当たりは、カットボールをコースに決められなかったのが悔しかったです」
走者を背負っても、決して慌てない。
「自分は三振を奪いたいときに取れるほうだと思っているので・・・
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