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2024大谷翔平特集 自らのバット&足で偉大なるシーズンへ

<大谷の50-50の秘密を探る>岩隈久志に聞く 元日本人メジャー投手からの視点「相手バッテリーに強烈に、そして嫌な印象を残す打撃をした2024年だった」

 

三冠王に手が届くような成績に59盗塁と怪物的な記録を残した2024年シーズン。対戦した側の投手はどういう思いで腕を振っていたのだろうか。数々の強打者と対戦してきた岩隈久志氏に、大谷翔平のデータに見えない、投手だから感じる「すごさ」を語ってもらった。
取材・構成=椎屋博幸 写真=Getty Images

けん制もやりにくいリードの大きさで、うまくスタートを切る大谷の盗塁。それにより捕手がスローイングを焦ることが多かった


走れる状況をつくる


 メジャーを経験した私にしてもやはり「40-40」という数字はとてつもないものだと思います。しかし大谷翔平選手の様子を見ていると、そんなことは関係ないというか興味はないよ、というような雰囲気で次々と記録を達成していき「54-59」。とんでもなく素晴らしいシーズンとなりました。ここでは、投手目線からの2024年の大谷選手を見ていこうと思います。

 まず盗塁の話をしましょう。やはり足は速いですよね。その中で、われわれ投手が、盗塁を阻止する作業をする際にまず取り組むことは「タイミングをいかにズラすことができるか」。「1球目をどう入るか」。そして「変化球を投げるカウントで、どういう対応をするのか」という部分になります。

 個人的には、MLBでは2回しかけん制ができないシステムの中で、最初にけん制をしてしまうと、次のけん制を投げない確率が高くなってしまう。それは走者有利となると思います。そこを踏まえるとなかなか簡単にけん制はできないので、クイックやタイミングを外す作業が中心となります。また大谷選手はそこまで極端なリードを取らないので、投手としてはけん制をやりにくいタイプですから、この駆け引きの中で、うまくスタートを切っていました。

 それ以降は捕手のスローイングにかかってきています。大谷選手は足が速いので、うまくスタートを切った場合に、捕手はどうしてもスローイングに力みが出るためセーフの確率が高まります。そういう成功を繰り返していくことで、次の対戦相手のバッテリーが必要以上に警戒をしてくる、という流れが出来上がっていきます。

 私が記憶している中では、大谷選手の盗塁が増えたシーズン後半、きっちりと二塁、三塁ベース上に投げた捕手は、そう多くなかったと思います。それは警戒しながらも力んで投げてしまっていた証拠になります。大谷選手にとってはこれがいい循環になり、走りやすい状況が出来上がり・・・

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