まるで、闇が闇を覆い隠すようだ――。清原和博が覚醒剤所持で逮捕されたのを受け、本誌では「清原和博、栄光と転落」という連載をスタートさせた。しかし、ここに来て終わったはずだった巨人の野球賭博問題が新たな展開を見せている。読者の皆さんを混乱させてしまうかもしれないが、企画の再構築をし、新連載の形でリスタートさせていただきたい。まず1回目は現状の再チェックと、アメリカのコカイン汚染、MLBのサポート体制についてだ。 文責=編集部、写真=BBM 協約180条の違反賭博行為の禁止に抵触
多少前号の繰り返しになるが、今回の問題を整理していく。球春を告げる開幕を待つプロ野球に、またも激震が走ったのは3月8日だった。巨人・
高木京介の野球賭博への関与が発覚。10日には巨人が、高木京の告発書をプロ野球の熊崎勝彦コミッショナーに提出。熊崎コミッショナーが常設の調査委員会に調査を委嘱し、野球賭博問題が再燃した。「返す、返すも残念であり、痛恨の極みである」と熊崎コミッショナーは悔しさをにじませる。そして「多くの野球ファンの皆さん、野球界を支えていただいている多くの方々に、賭博問題がまた発覚したということでご迷惑をお掛けして申し訳ない」と神妙な面持ちで謝罪をした。
この行為は野球協約に定める有害行為にあたる。高木京が告発されたのは、賭博行為の禁止および暴力団員等との交際を禁止する野球協約180条への違反。プロ野球の試合に金銭を賭ける賭博行為、そして賭博常習者B氏との関わりが、それだ。調査委員会での調査で事実関係が認定されれば、1年間または無期の失格処分が下されることになる。
少し問題を振り返る。発端は、昨年10月に巨人が
福田聡志の野球賭博関与を、熊崎コミッショナーに告発し始まった。熊崎コミッショナーは今回同様、常設の調査委員会に調査を委嘱。その過程で
笠原将生、
松本竜也も野球賭博を行い、賭博常習者との交際も明るみに出た。
野球協約上の有害行為で最も重いのは敗退行為、いわゆる八百長行為などを禁止する野球条約177条の違反。これは永久失格処分となる。福田元投手に関しても自軍の試合に関して金銭を賭けていた。野球協約177条第1項6号に抵触する疑いも出たが、当時は二軍にいたことなど自らが勝敗に関与する立場にないとして、八百長行為は否定された。3選手は野球協約180条違反として、昨年11月に無期失格処分を受ける。当然、調査の中で巨人をはじめとする各球団も全選手への聞き取り調査を行ったが3選手以外で野球賭博への関与は確認できなかった。だが約5カ月後、野球賭博に関与した4人目の選手が発覚したのだ。

巨人で発覚した野球賭博。昨年11月に契約解除となった笠原、福田、松本[上から]。3月に入りかかわったことを認めた高木京は謹慎処分となった
今後は未来において再発を防ぐことを
球界は信頼面において深い傷を負った。では、なぜこうした事態になったのか?球団や調査委員会の調査に不備があったのか?これは『調査』という限られたアクションの限界を表している。巨人3選手の処分が決定された昨秋、熊崎コミッショナーは「全容が解明されたとは言いがたい」との言葉を残していた。「捜査権はなく、あくまでも調査自体は任意。適法な範囲内で調査を尽くさなければならない」。『捜査』ではなく『調査』。巨人3選手は自らの携帯電話を提出し、消去されたLINEなどの記録を復元する等の過程を経て賭博の内容などが解明された。だが、例えばそのほかの選手の調査に関して、携帯電話の提出を強制するなどの権限は持ち得ない。
さらに、賭博問題の全容解明で鍵を握る賭博常習者B氏。ただ熊崎コミッショナーが「全容解明のために必要な方の協力を得ることが不可欠となってくる場合がある。そういった協力が必ずしも得られないことは事実」というように、B氏は賭博常習者と認定されて以降、調査委員会の聴取を拒否し続けていた。
警察などの捜査機関でない限り、過去の事案すべてを白日の下にするのは困難だ。高木京も昨秋以降の調査では一貫して関与を否定し続けてきた。それが家族らの説得などもあり罪を認めるに至っている。したがって、巨人4選手のほかに野球賭博に関わっている者がいる可能性を、完全に否定することができないのが実情だ。熊崎コミッショナーは「有害行為等の不正を徹底的にあぶり出すという覚悟」と不退転の決意を示した今回の調査。どれだけの闇に光を当てられるかが注目される。
一方で最も重要なのは未来において再発を防ぐことだ。昨秋の問題発覚以降、NPBそして日本プロ野球選手会は、今春キャンプでも全球団で有害行為や禁止薬物についての研修を行うなど再発防止に努めてきた。これを継続していくことが球界の信頼回復へ、唯一の道に思える。
その後に巨人、
阪神などで試合中の円陣で自軍の勝敗によって「声だし」役と、ほかの選手の間に金銭授受があった事実が問題となった。これは野球協約に違反する有害行為にはあたらず、賭博問題とは区別しなければいけない(その後
ソフトバンク、
広島、
西武、
楽天、
ロッテも告白)。加えて、すでに熊崎コミッショナーも1月29日の時点で野球に関する金銭授受を禁止するコミッショナー通達を発令している。
ただ、こうした事案が問題視される現実は重く受け止めなければならない。「球界の常識が世間の常識ではない」。それだけファンを始めとした世間の目が、球界の倫理感を厳しく問うているのだ。当事者意識を持たない球団が1つでもあれば、第2第3の野球賭博問題を生む結果になるということを、忘れてはいけない。
[野球協約 2015年度版] 第18章 有害行為第180条(賭博行為の禁止及び暴力団員等との交際禁止)
1 選手、監督、コーチ、又は球団、この組織の役職員その他この組織に属する個人が、次の行為をした場合、コミッショナーは、該当する者を1年間の失格処分、又は無期の失格処分とする。
(1)野球賭博常習者と交際し、又は行動を共にし、これらの者との間で、金品の授受、饗応、その他いっさいの利益を収受し若しくは供与し、要求し、申込み又は約束すること。
(2)所属球団が直接関与しない試合、又は出場しない試合について賭けをすること。
(3)暴力団、あるいは暴力団と関係が認められる団体の構成員又は関係者、その他の反社会的勢力(以下「暴力団員等」という。)と交際し、又は行動を共にし、これらの者との間で、金品の授受、饗応、その他いっさいの利益を収受又は供与し、要求又は申込み、約束すること。
2 前項の規定により無期の失格処分を受けた者(後に期限が定められた者を除く。)であっても処分後5年を経過した者でその間において善行を保持し、改悛の情顕著な者については、本人の申し出により、コミッショナーにおいて将来に向かってその処分を解くことができる。
3 前項の規定により処分を解かれた者が、選手として復帰を希望するときは、第177条第3項の規定を準用する。