ペナントレースとは違い、セ・リーグが混戦となり、パ・リーグが独走となった。今回は両リーグの首位打者レースを振り返りながら、2人のタイトルホルダーの記録を分析する。 外角を克服した坂本

今季の坂本は飛距離も出てきた(23本塁打)。それだけしっかり振れているからだ
今年のセ・リーグの打率レースは、春先は
ビシエド(
中日)、
菊池涼介(
広島)らがトップ争いをし、その後、
エルドレッド(広島)、
坂本勇人(
巨人)が競り、途中から抜け出したのが、
山田哲人(
ヤクルト)だった。最終的に2年連続でトリプルスリーを達成した山田は、一時、“三冠王+盗塁王”の快挙を成し遂げるのでは、とまで思われたが、故障もあって失速。7月に入って
筒香嘉智(
DeNA)が接近する展開となった。
そして最後の勝者となったのが、8月3日にトップに立った坂本だった。8月の月間打率.391で2位以下を引き離すと、終盤、広島の“神ってる男”
鈴木誠也の追い上げもあったが、.344で初のタイトルを手にした。坂本にとっては2 012年の.311以来の3割到達。チームV逸の悔しさはあるだろうが、近年は打撃不振に苦しんでいただけに、今後につながる大きな手応えとなった戴冠だったと思う。
15年の数字と比較していく。前年に比べ、対左投手の打率が.261から.285となっているが、それ以上に顕著なのが対右投手で.272から.369と大幅にアップ。これは前年まで苦戦した右投手の外角への逃げる球、落ちる球の克服が挙げられ、データで見ても外角が高めを.154から.368、低めを.192から.260とし、さらにスライダー系が.180から.337と大きく向上しているのが分かる。
解説者の
立浪和義氏はシーズン中、「左足を上げた後、遊びがあり、間ができているのが大きい」と技術面から好調の要因を分析していたが、坂本自身、自分の打撃をもう一度見つめ直したシーズンだったことは確かだ。春季キャンプでは、
松井秀喜臨時コーチから、右足に体重をためて打つ打法を教わると、これまでよりも左足の上げ幅を小さくし、重心の低い構えに変更。軸回転で振り抜く打撃フォームを習得し、体勢が崩される場面が減った。
定評ある内角打ちもさらに磨かれ、内角真ん中が.150だったのが.442に、低めが.100から.250とアップ。これで、ほとんど穴がなくなった。インハイ、フォークにやや難があった鈴木との差がはっきり出たと言えるかもしれない。
球団別では昨年.161とまったく打てなかったヤクルト戦で.393と逆にカモにした。もう一つ興味深いのが昨年.310から.402となった中日戦。実は15年、ナゴヤドームでは.224と抑え込まれていたのが、今年は.396とよく打っている。
打球方向では、センター方向はほぼ変わらないが、レフト方向が11本、ライト方向が17本増えている。球に逆らわず打ち返している証拠と言えるだろう。
独自のゾーンがある角中

どんな球でも打つ角中。コースではなく、タイミングを重視しているという
パ・リーグだが、5月に入ってトップをキープしていたのが
岡島豪郎(
楽天)で、僅差で
内川聖一(
ソフトバンク)が追っていた。
角中勝也(
ロッテ)がトップに立ったのが、5月25日。この時点ではトップ10の中で、角中を含め、なんと9人が左打者だった(最終的には7人。セは4人)。角中は、そのまま3割5分前後の打率をキープしていったが、ほかがジリジリ落ち、8月11日には角中以外すべて2割台(2位の
陽岱鋼が.2994)という珍現象もあった(翌日には“解消”も、その後、もう1日あった)。その後、
西川遥輝(
日本ハム)らが迫った時期もあったが、ほぼ独走でゴールテープを切っている。12年、育成出身の首位打者として騒がれながらも、以後は3年連続で3割に届かなかっただけに、うれしいタイトルだろう。
角中の特徴は、なんと言っても“ボール球打ち”。それも「少々のボール球でも……」というレベルではなく、時にワンバウンドしそうな球をヒットゾーンに運ぶ。コース別のデータを見ても、すべてボールゾーンで、真ん中低めが.467、高めが.444、内角高めが.750となっている。角中のシーズン中からの言葉を聞いていても、自分なりのストライクゾーンがあるというよりは、自分のタイミングに合えば、すべて振っているという印象がある。
また、自身で「決して得意ではない」と語る内角は2割台とやはり高くはなく、外角低めが.161と明らかな穴もある。まだまだ進化の余地はあると言えるかもしれない。球種的には、ツーシームが.417、カットボールが.414と一瞬の反応が要求される速い変化球に強く、フォーク系が.273だけで、ほかはすべて3割以上と苦手はない。ただ、前年はカーブに.237、フォーク.170と緩い変化球にやられており、タイミングに迷うと調子を崩す傾向があるのかもしれない。
球団別では昨年.250だった
オリックスに.402、苦手は変わらないが、.217だったソフトバンクから.297と大きく数字をアップさせている。興味深いのは.329とそこそこ打っている日本ハムながら、実は札幌ドームでは.256。それだけホームでの日本ハム戦では打ち込んでいるということでもある。
左右投手別では、対左は15年の.304に対し、.303とほとんど変わらないが、右投手に対しては.290から.352まで数字を上げている。安打方向ではライト方向も57から65と増えているが、センターが27から51、レフト方向が34から50となっており、よりボールに逆らわず、広角に打ち分けるスタイルを徹底したことが分かる。(本誌・井口)