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世界一奪回へ、侍ジャパン特集

侍ジャパン・小久保裕紀監督インタビュー 「本番に向けての結束力を高めたい」

 

求められるのは世界一奪回のみ。2013年の第3回WBCで、日本が3連覇を逃したことを教訓に、同年10月、侍ジャパン(代表チーム)は常設化された。「全世代世界最強」を掲げ、年代別カテゴリーの強化・育成も目的の1つだが、最大のターゲットは、来春3月7日開幕の第4回WBCである。本番まで4カ月。3年の強化期間を経て、最後のテストマッチに望む小久保裕紀監督に、侍の現在地を問う。
取材・構成=坂本匠、写真=小山真司、GettyImages


日の丸を背負う使命と責任


 ブルックスブラザーズのオフィシャルスーツを颯爽と着こなした指揮官が、インタビュールームに設置された日の丸を前に、より一層表情を引き締める。2013年10月に侍ジャパン代表監督に就任してから、はや3年。世界一奪還を託された小久保裕紀は、限られた活動時間の中、若手を積極的に抜擢しつつ、チームを強化。日の丸を背負った多くの選手が、今やトッププレーヤーへと変貌を遂げている。4カ月後に迫った決戦に向け、指揮官も目を細める選手の成長は、大きな財産である。

――2017年の第4回WBC開幕まで5カ月を切りました。

小久保 いよいよ、という思いです。

――監督就任後、初めての活動となった台湾遠征以降、3年間で5度の活動を経て、思い描いていたとおりにチーム作りは進んでいますか。

小久保 日本のトップチームの常設監督として私が選ばれてから、最も大事な仕事の1つと考えてきたのが、選手の意識を変えることでした。日の丸を背負って戦うことに対しての使命感や責任を持って、常日ごろからプレーする意識を選手たちに持ってもらおう、と。代表チームはどうしてもシーズンオフや、開幕前に活動をしますから、肉体的にも大きな負担があります。精神的にも日本を代表することを重たく感じる場合もあるでしょう。それでも、最終的には「トップのわれわれがやらないで、誰が今の日本球界を引っ張るんだ?」という想いを持った選手を集めて、世界と戦いたいと考えてきました。この点に関しては、非常に意識の高い選手が増えましたし、そういう想いを持った選手たちが、今の侍ジャパンには集まっていると思います。

――例えば、13年の台湾遠征は26歳以下の選手で構成されたチームであったように、これまでの活動では常に「17年を見据えて」をキーワードに代表(トップ)経験のない選手も積極的に抜擢してきました。そんな選手たちが、この3年間で躍進、今季は小久保ジャパン選出歴のあるメンバーの多くがタイトルホルダーとなっています。

小久保 各チームで大黒柱的な存在ではなかったですが、それでも順調に伸びれば、ゆくゆくはチームの主力になり、日本球界でも中心を担うであろう選手を選んできたつもりです。彼らの成長は頼もしく思いますし、日の丸を背負ってプレーしたことで、責任と使命を感じてチームに帰り、そこでも良い影響を周囲にも与えてくれているのであれば、うれしいですね。私も長く選手をやらせていただきましたから、シーズンを戦い抜くキツさを理解しているつもりですが、若い選手に関しては、「申し訳ないけど、オフは諦めなさい、日本のトップ選手なのだから、秋もやるぞ」と。特に坂本勇人(巨人)、中田翔(日本ハム)、山田哲人(ヤクルト)などは、もともと所属チームはもちろん、将来的に日本代表を引っ張っていくべき存在でした。そして、この3年で個人の成績もしっかりと残しつつ、確実に、そうなってきてくれているなと感じます。

監督就任から3年間で24試合を経て、大枠でのメンバーの固定化を実現。13年以前のWBCでは直前合宿まで選考が行われていたことを考えれば、常設化の効果は大きい。小久保裕紀監督を中心に、チームの結束は固い


敗戦の悔しさを原動力に


いまでもあの日の敗戦を、思い返すのだという。小久保ジャパン立ち上げ以降、初めてのチャンピオンシップとなった第1回プレミア12(15年11月5日開幕、日本・台湾)で、侍ジャパンは全勝で決勝トーナメントへとコマを進めたが、開幕ゲームで5対0と完勝していた韓国に、準決勝で逆転負け(3対4)。初代王者を逃し、屈辱の3位に。一発勝負の怖さを思い知らされる結果となった。

――第4回WBCの前哨戦の意味合いもあった昨秋の第1回プレミア12は、監督就任から初めてのチャンピオンシップでした。世界一を目指し、しかしながら、準決勝で韓国に敗れ、3位に終わったわけですが、敗因・課題をどう分析していますか。

小久保 ブルペンのケアについては反省点の1つであったと考えています。自分たちの所属のチームであれば、試合の流れを見て、このくらいのペースで準備をしておけば、と指示がなくても分かるものです。でも、代表に来ると、選手の立場からすれば勝手が違う。ただ、われわれの立場からすると、短期決戦の国際試合で、集まってすぐに「○○は7回、△△は8回」と指示できないのも事実です。とはいえ、例えばこの1試合に関しては、「こういう場面で」と、明確に伝えてあげることも必要だったと思います。プレミア12では、ブルペン陣に少なからず戸惑いがあったと考えています。

――この大会ではブルペンにコーチが配置されていませんでした。

小久保 一番の反省点です。今春に台湾と強化試合を行いましたが、そこでは斎藤隆コーチ(当時)にブルペンを任せました。今回のメキシコ、オランダとの強化試合は、プレミア12ではスコアラーをしながら、バッテリーにアドバイスを送る役割をしてくれていた村田善則バッテリーコーチに、ブルペンをお願いします。

――加えてプレミア12後、データ班の充実もリクエストしているとか。

小久保 プレミア12の敗戦からも得た教訓ですが、昔のように「良いボールを持っているんだから、思い切って投げ込め」というような、気持ちを高めるアドバイスは、今の選手たちには通用しないと感じました。現代のプロ野球界は対戦相手のデータがあるのは当たり前。その環境の中で選手たちはプレーしていますから、国際大会では未知の相手にデータがないことに不安を持ちます。1度しか対戦しないかもしれない、名前すら覚えるのも大変な国際大会のような環境下では、われわれスタッフがしっかりと傾向を伝えてあげることが重要でした。その後押しがなければ、自信を持って打席に立てないし、マウンドにも向かえないと感じたので、NPBに要望しその点の強化を図っています。具体的にはチーム内のスコアラーですね。大会期間中、試合中に素早く分析し、選手たちを後押しできる体制を考えています。

――プレミア12敗退後、選手たちにどのような言葉をかけたのですか。

小久保 国際大会の1敗の重みは私自身もそうですが、みなも感じたと思います。ただ、予選でも、良い戦いはいっぱいあったと思います。負けた責任は私にあるし、韓国戦の1敗は重たいものでしたが、そこまでの過程はみな、素晴らしかった、と。そこをすべて否定してしまうなよ、という話はしました。

――最大のターゲットである第4回WBCを前に、プレミア12で負けた経験は次に生きるのではないですか。

小久保 プレミア12直後は言い訳になるので黙っていましたが、負けから学ぶことは当然あります。例えば先ほどのブルペンの整備など、手を打っていますし、良かった点も多かった。ただ、人間というのは、忘れる動物です。あの悔しさを絶対に忘れないように、自宅の書斎に準決勝の韓国戦翌日の新聞の一面を、目に見える位置に置いています。

――逆に、未知の国との対戦が続いたプレミア12での収穫は。

小久保 やはり、投手力です。日本の投手のレベルの高さを再認識できました。負けられない試合での前田健太(ドジャース)であり、大谷翔平(日本ハム)のパフォーマンスは素晴らしかった(※前田は準々決勝プエルトリコ戦で7回をゼロ封。大谷は開幕試合の韓国戦で6回ゼロ封10奪三振。準決勝の韓国戦でも7回をゼロ封もチームは敗退)。大谷個人のことを言わせてもらうと、たびたび「ここ一番に弱い」という発言を本人がしているのですが、弱かった自分を素直に認められるから、今がある。あの韓国戦をきっかけに、今季を見ても、負けられない試合ではほとんど勝利を収めていますね。この成長は素直に感心しますし、うれしく思います。今回は疲労を考慮して代打かDHの起用ですが、打つほうでも貴重な戦力と考えています。
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