11月17日──。悩んだ末に、獅子のエースが決断を下した。今年で10年目のシーズンを終えた岸孝之。11月2日に海外FA権の行使を表明して約2週間。出身地でもある宮城に本拠地を置く楽天への移籍を決めた。しかし、西武を離れることを決めることは簡単ではなかった。苦渋の決断に至った過程に迫る──。 写真=松田杏子、内田孝治 
初交渉から1週間、11月18日、Koboパーク宮城で入団会見に臨んだ岸
「チーム愛」と「球団愛」
シーズンが終盤に差し掛かりつつあった9月上旬のことだった。岸孝之は西武側と、フリーエージェント(FA)に関する1回目の話し合いの席に着いた。のちに海外FA権の行使を表明した際に「移籍を前提としたものではない」と話していたように、この時点で岸の中では確かに「残留」が基本線だった。だが、交渉の過程で徐々に「移籍」へと気持ちが傾いていった。まるで毎年のように西武から他球団に流出していった主力選手たちと同じように……。
球団側の交渉の責任者だった
鈴木葉留彦球団本部長は「交渉の途中で条件の見直しがあった」と明かすように、1回目の交渉で提示された条件は「現状維持の2年契約」だったようだ。岸の今季の年俸は2億2500万円プラス出来高払い(推定)。球団側が、この条件で岸を残留させられると本気で思っていたとは考えられない。通算103勝を挙げているエースに対する「誠意」を強く示しているとは言いがたいものだった。
岸という男は、極めて真面目で誠実な性格の持ち主だ。後輩の
菊池雄星が「あんなに優しい人はいない。本気で他人の立場になってくれる」と話すように、チームの中でも岸を悪く言う者はいない・・・
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