開催国アメリカの初優勝に終わった2017第4回WBCだが、日本はそのアメリカに準決勝で惜敗した。アメリカがつぎ込んだ7人の投手の前に散発4安打1得点と、1、2次ラウンドでは好調だった打線が沈黙。日本打線が特に苦しんだのが、手元で激しく動くツーシームだ。「日本では見たことがない」が選手たちの感想だが、世界の変化球(とその使い方)の最新トレンドとは何か。08~09年にはロイヤルズで43試合に登板した薮田安彦氏に、解説してもらおう。 取材・構成=坂本匠、写真=小山真司、Getty Images THEME.I Q.ずばり、最先端の変化球って何ですか?
A.1球で仕留めるためのゾーン内で動くボールです 日本代表が準決勝のアメリカ戦で苦しめられたように、引き続きストライクゾーン内でボールを動かして、打たせて取るスタイルが主流です。WBCには球数制限がルールとしてあるわけですが、MLBでも投手は球数がキッチリと管理されてシーズンを戦っています。いかに球数を少なく、アウトを取っていくかを考えると、ストライクゾーンでボールを動かし、1球で内野ゴロを打たせるのがベスト。日本では長いリーグ戦を戦っていくと、そういった球種に対策を立て、反対方向におっつけて打ったりするのでしょうが、MLBでは打順に関係なく、初球から振ってくる打者が多い。そのような打者に内野ゴロを打たせようと考えれば(特に右投手対右打者の場合)、ツーシーム系の変化球が多くなるのは当然だと思います。
日本とアメリカの準決勝を例に挙げれば、先発のロアークのツーシームに日本打線は凡打を繰り返しました。右打者には胸元、ヒザ元に食い込むように変化をし、左打者には芯を外すように逃げていく。日本でもツーシームを操る投手(外国人投手含む)はいますが、動き方は日本で見るそれとはケタ違いに大きかったと思います。しかも、手元で急激に変化するので驚いたのでしょう。そもそも日本とはボール(の製造メーカー)の違い、環境面の違いもありますが、メジャーの投手は手が大きいこともそういった変化を操れる理由に挙げられると思います。
総じて球速もあり(日本戦で投げた7投手はみな150キロを超える球速を持っていました)、これがメジャー各球団のエースクラスの一線級投手になると、意識的に動かして、しかもコーナーキッチリに投げ分けるコントロールも持っています。制球力の良い日本人投手のように、捕手の構えたところにしかこないような、外、内の出し入れも自在にこなします。こうなると、メジャーの一流の打者でも攻略が難しいわけです。

日本打線を4回2安打に封じ込めたロアーク[右]とポージーのアメリカ先発バッテリー。1打席目に三振を喫した五番の中田翔は「ロアークはみんなが思っている以上にツーシームが動いていた。予想以上でした。正直、あそこまで動くボールを日本で投げる投手はいない」と脱帽
一方で、ランクが下がると、ただストライクゾーンに投げて、アバウトに動かすだけの投手もいます。日本を手玉に取ったロアークにしても・・・
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