ユニフォームは選手がまとう戦闘服であると同時に、球団のアイデンティティーが詰まったアイコンでもある。背景や歴史、デザインなどに熟知した2人の“プロ”がプロ野球ユニフォームの奥深き世界を紹介しよう。 取材・構成=滝川和臣、写真=長岡洋幸 2017年ユニフォームの傾向
──リニューアルしたものをはじめ12球団の2017年のユニフォームが出そろいました。印象はいかがですか。
綱島 ホームとビジターに限れば、見た目にもはっきりと分かる変更があったのが
中日と
巨人かな。
大岩 巨人はビジターがグレーとなり、帽子ツバのエッジがブラックに変更されてよりシンプルになりました。
綱島 昨年までの水色は素材のせいなのかテカテカ感があって、昔のドジャースが作ったサテン地の企画ユニフォームっぽかったけど、今年はグッと引き締まったよね。
大岩 ユニフォームは、素材感が見た目の印象にすごく影響してきますから。
綱島 昭和20年代に「TOKYO」と戦後初めてユニフォーム(1953年~60年)に入れたデザインに似せている。
大岩 僕のようなアラフォー世代は、子どものころに見た80年代の巨人の水色ユニフォームを思い出します。デザインはもちろんですが、ユニフォームは子どものころに親しんだものが記憶に残るものです。
綱島 それぞれの世代で子どものころに見たユニフォームが刷り込まれてしまう。
阪神のギザギザの「輝流ライン」が妙に人気があるのは、タイガースファンの核になっている40代から50代くらいのファンが子ども時代に親しんだユニフォームだからなんだよね。
──今シーズン、中日のユニフォームも新しくなりました。
綱島 星野仙一監督時代、
落合博満監督時代の折衷という感じではあるけれど、デザインにちょっと発想の行き詰まりがあるのかな。僕は1960年代の“水原型”のユニフォームを現代風にしたほうがカッコいいと思った。
大岩 今年の中日は斜めに袖ラインが入っていて、細かな部分で工夫が見られますけどね。
綱島 でも、もっとシンプルでいいと思う。「Dragons」の胸ロゴはデザインが抜群にいいからね、それを生かさなきゃ。
大岩 同感です。デザイナーからすると、胸ロゴの書体がキマっていればほかのデザインは何もいらないくらいです。
綱島 ユニフォームは胸ロゴなんだよね。それさえしっかりしていれば、極端な話、白地でもいいくらい。
大岩 ロゴの完成度が高いのがカープ、マリーンズあたりでしょうか。いずれの球団もホームは、シンプルなユニフォームですよね。
綱島 スワローズもそうだよね。ずっと使われてきたロゴというのはそれにふさわしい形になっている。ファンの頭にも刷り込まれているわけで、球団はもっとロゴを大切にしなきゃいけない。なのに、親会社が変わったりすると簡単にロゴを変えてしまう……。
大岩 僕はユニフォームを普段着として、街着でも楽しめるデザインを意識しています。それにはやっぱりロゴが決まって、シンプルなほうがしっくりくる。
綱島 スポーツウェアってシンプルなほうがカッコいいんだよね。例えばテニスのウインブルドンは「白」と規定されている。あれを見ると真っ白なテニスウェアはカッコよく見えてしまう。その昔はクリケットなんかもそうで、ハイソな雰囲気があった。70年代あたりに素材の変化があり、スポーツウェア全般がカラフルになっていった。最初は新鮮だったけど、色の使い過ぎはだんだんうっとおしくなってきた。MLBはそれを経て、逆にシンプルなデザインになっていった。日本はまだごちゃごちゃする傾向にあるように感じます。
──
ロッテはサプライヤーがマジェスティックへ変更になり、背中の書体が変わっています。
綱島 背番号も大事にしてほしい。好きな球団の背番号ってフォントで覚えているもの。長い間、球団が使っていたフォントってあるんだよね。中でもスワローズは特徴的で・・・
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