野球界で当たり前のように使われている言葉やプレー。「結局、それってどういうこと?」と聞かれると、意外にうまく説明できない事象を、データや数字を使って解析していく。第29回のテーマは「エンゼルス・大谷翔平の速球への対応力」だ。 
高い打撃技術によりスピードボールにしっかり対応できる。大谷の速いボールへの対応力には目を見張る/写真=Getty Images
球速が速ければ速いほど大谷は打球速度が速くなる
今回もエンゼルス・大谷翔平選手の打撃データをひも解きながら、そのバッティングを分析していきましょう。
前回は、大谷選手の打球速度の最速がMLB全体で205位の183.3キロに対し、“平均”打球速度ではMLB全体で11位の149キロを記録していることを解説しました。
今回は投手が投じたボールの球速別の打球データを見ていきます(表1)。平均打球速度が11位と大谷選手はもともと打球速度が速いのですが、それを差し引いても速いボールに対して強さを発揮していることが分かります。MLB投手全体のフォーシームの平均球速は約150キロですが、その球速150キロ台のボールに対しては打球速度151.3キロとMLB平均を約8.2キロも上回っています。
表1 投球の球速別打球特性(2018年) 
(c)Nextbase Corp.
さらに特筆すべきは、球速160キロ台のボールに対する打球速度が154.7キロと平均を11.7キロも上回り、打球角度も14.9度をマークしていることです。打球角度は約20〜35度で打球飛距離がもっとも伸びるため、平均の11.5度より角度がついたほうが打球飛距離は伸びることになります。
球速150キロ台のボールに対してはMLB平均でも143.1キロと最も速い数値を記録していますが、球速140キロ台に対しては打球速度139.9キロと約3.2キロ低下し、球速160キロ台に対してもわずかに打球速度は落ちています。それに対して大谷選手は、球速140キロ台に対しても打球速度はほとんど落ちず、球速160キロ台に対しては打球速度が上がり、いい角度もついています。いわゆるファストボールに対しては、遅いボールにも、より速いボールにも対応できているということです。遅いボールに対しては待てる、より速いボールにも反応できる、という技術の幅がうかがえます。
サンプル数が7球と少ない球速120キロ台のボールを除いても、球速130キロ台のボールに対して大谷選手はMLB平均とさほど変わらない数字しか残していません。やはりファストボールに対する強さが、大谷選手の最大の強みだと言えます。
解説者 PROFILE 神事努/じんじ・つとむ●国学院大学人間開発学部健康体育学科准教授。1979年生まれ。バイオメカニクスを専攻し、中京大学大学院で博士号を取得。2007年から国立スポーツ科学センター(JISS)のスポーツ科学研究部研究員。国際武道大学体育学部を経て、2015年4月から現職。株式会社ネクストベース エグゼクティブフェロー。