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交流戦プロフェッショナルの視点

交流戦・川口和久の視点 最大のポイントは7回表の「四球」

 

6月4日にスタートした「日本生命セ・パ交流戦」。いつもとは対戦相手も変わり、当然戦いの様子も変わってくることになるが、その中ではどんな攻防が繰り広げられたのだろうか。ここでは、第1週のカードから3つのゲームをピックアップ、評論家3氏にプロの視点での解説をお願いした。昨年のセ、パ王者が対戦したカードの第2戦。広島が不振だった田中広輔の大爆発もあって大勝したゲームだが、川口氏がポイントに挙げたのは、西武先発・十亀剣が7回表、松山竜平に与えた1つの四球だった。
解説=川口和久(野球解説者) 写真=大泉謙也

西武先発・十亀。6回までは危なげないピッチングを見せたが……


スタイルを変えた大瀬良


 序盤の大不振を乗り越え、5月に20勝4敗1分けで首位固めをした広島と、投手陣の不振で今一つ勝ち切れない西武の対戦だったが、3連戦の初戦となる前日4日は、延長12回で西武がサヨナラ勝ちした。

 迎えた2戦目、広島の先発はエースの大瀬良大地。ただ、持ち味である緩急をうまく使えず、左打者のアウトコースへの出し入れもできなかった。調子自体が悪かったこともあるだろうが、慣れないメットライフドームのマウンドもあったのではないか。私が現役時代、日本シリーズなどで登板した際にも感じたことだが、この球場のマウンドの傾斜はセの球場に比べるとなだらかで、投手には低く感じられる。

 細かい制球で勝負できないと判断した大瀬良は、パワーピッチングに切り替えた。150キロ前後の真っすぐを見せ球にしながらの組み立てだ。もちろん、目いっぱいでは全球投げられない。目先を変えつつ苦労しながら投げていた。6回で122球だから、球数もかなり多く、アップアップであったことは確かだが、むしろ悪いなりに修正したピッチングができたことに彼の成長を感じた。

 結果的には毎回安打、3四球1死球ながら、6イニングを外崎修汰のソロホームランのみで抑え、6勝目を挙げている。

悪いなりのピッチングで貫録を見せた広島・大瀬良


2つの満塁機の明暗


 6回までは西武先発・十亀剣のほうが大瀬良よりいいピッチングをしていた。3回に野間峻祥の二ゴロの間に1点は失ったが、うまくゴロを打たせながら4、5、6回はすべて3人で斬って取り、試合は1対1のまま6回を終えた。こう着した展開が続くと、次の1点をどちらが取るかで流れが一気に変わる。それは西武・辻発彦監督、広島・緒方孝市監督とも分かっていたと思う。

 面白いことに、この試合に関しては野球の神様が同じようなチャンスを与えた。まず6回裏、西武の攻撃だ。二死一塁から中村剛也の四球、栗山巧の死球で満塁。ここは、大瀬良が続く愛斗をファーストフライで無失点に抑えた。一方、広島は7回表、四番・鈴木誠也のヒットから西川龍馬がセーフティー気味のバントで送った後、松山竜平に四球、會澤翼に死球で、こちらは一死だが同じく満塁とし、十亀から代わった小川龍也が打率1割台の不振で八番まで打順を下げられていた田中広輔に勝ち越しの決勝タイムリーを打たれた。

 田中広の復調の理由については、この号の私のコラムも読んでいただきたいが(→こちら)、第1打席でインコースを攻められ、2-2となった後の外の球をレフト前に運んだ際(二塁打)、「広輔らしさが戻ってきたかな」と思った。外角の見極めができずボール球を引っ掛け、右方向のゴロになることが多かったが、このときは球に逆らわず、素直にバットが出ていた。

7回に勝ち越し決勝打を放った田中広


投げ切る力


 ただし、このゲームのポイントは、むしろ、その前だった。十亀が松山に四球を出したことだ。松山はここまで絶不調。この試合もまったくタイミングが合っていない。試合の流れを変える“もったいない四球”になった。さらに言えば、死球を出した次の右打者の會澤も三ゴロ、レフトフライと引っ掛けた当たりばかり。この不振の2人を歩かせ、「どうぞ点を取ってください」という状況にしてしまったのは痛かった。

不振の松山への四球がゲームを動かすことになる


 7回の十亀は、6回までと別人のように見えたが、一つには、ここまで3連勝していたといえ、ほとんどが6回、100球前後での交代だったこともある。まだ球数はさほどではなかったが、7回はいっぱいいっぱいになっていたようにも見えた。絶対完投とは言わないが、100球どうこうではなく、試合をしっかり締める力が先発投手には必要だ。今回の大瀬良と十亀の差と言ってもいい。

 結果的に十亀は、被安打3ながら、ここで左腕の小川龍也に交代。前述のように、続く田中広は、小川のインコースに入ってきた甘い球を引っ張ってライト前に運び、勝ち越し決勝打の1点。さらに代打の磯村嘉孝が代わった右の森脇亮介のインコース低め、フォークの落ち際をレフト線に運び、2点タイムリーとなる二塁打。試合は完全に決まってしまった。

 7回裏を3人で抑えた広島の二番手・レグナルトの好投、続く8回、バティスタの超特大ソロ本塁打、さらに、田中広の満塁弾もあって、試合は9対1で広島の大勝となったが、試合のターニングポイントとなったのは、7回表、松山への四球であったと思う。

広島先発・大瀬良大地、西武先発・十亀剣の投げ合いで序盤は投手戦となったが、1対1の7回表に広島が田中広輔の適時打などで3点を奪い、8回にも田中広の満塁弾など一挙5点で勝負を決めた。広島・西川龍馬は9回の内野安打で27試合連続安打。



PROFILE
かわぐち・かずひさ●1959年7月8日生まれ。鳥取県出身。左投両打。鳥取城北高からデュプロを経てドラフト1位で81年に広島入団。86年からは6年連続で2ケタ勝利。リーグ最多奪三振3回も、最多四球は6回を数えた。95年にFAで巨人へ移籍、98年限りで現役引退。2011年から14年は巨人のコーチも。通算成績435試合登板、139勝135敗4セーブ、防御率3.38。
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