阪神在籍10年間で、数々の外国投手の記録を塗り替えた、まさに虎の大エースだった。NPB通算98勝を挙げ、目標の100勝に届く直前に肩の痛みで、現役を終えることを決断した。しかし、メジャー時代を含めて21年間の現役生活、特に阪神での10年間はかけがえのないものになった──。今回は9月29日の引退試合の登板直前に語った、惜別の言葉を綴る。 取材・構成=椎屋博幸 写真=前島進、BBM 通訳=栗山正貴 “その時”が来たと理解
9月14日、西宮市内のホテルで引退会見。同29日には引退試合とセレモニーが行われた。引退試合をした外国人選手は、長い歴史があるタイガースの中でもほかにいない。それだけ阪神の投手陣を支え続け、阪神ファンに愛され続けた男だった。 ──最終登板の日にもルーティンの「卵を2個」食べて球場に来ましたか。
メッセンジャー(以下メッセ) もちろん! タマゴ2個とコーベ(神戸)ビーフを朝食で食べたよ。そこは毎登板と変わらないね(笑)。
──最終登板前ですが、表情的にすごくリラックスしていますね。
メッセ 引退会見を行ってから、徐々に「引退するんだ」という実感がわいてきたからだろうね。でも、大好きなものを取り上げられる、という感じだよ。これを受け入れるには厳しいね。
──ただ、自分で引退を決めることができるというのは、幸せでもあると思います。
メッセ 本当にそのとおりだ。まあ、肩に痛みを感じながら投げるのはイヤなものだからね。投げようと思えばできるかもしれない。でも、思い描いた投球ができなくてね。ただ、ほかの部分は今でもすごくヘルシーなんだ。
──それだけに何とか治したかったということでしょうか。
メッセ 何とか治したかったね。肩は投手にとってメーンの場所だから、これは仕方ない。昨季は痛みの中でも何とか投げることができたんだ。そして、今季のキャンプのときは痛みがなかったから大丈夫だろうと思っていた。それが投げるたびに痛みが再発してきたんだよ。痛みさえなければもっとできるという思いはあったけど、こればかりは……それで引退を決断したんだ。
──今季のキャンプでは、初めてオフに投げこまずにキャンプインしました。これも痛みを考えてのことだったんですね。
メッセ 一度、体を休めてみようという感じでオフは過ごしたんだ。実際にキャンプで肩を作り上げて、いい感じでシーズンに入ったんだけど、徐々に痛みが再発してきたという感じだったよ。これはもう僕の体が「限界なんだ」と言っていることだなと思ったんだ。
──痛めた後、一度アメリカに帰り、治療に専念しました。
メッセ サンフランシスコでさまざまな治療を行って日本に帰ってきた。このときもいい感じだと思っていたんだけど・・・
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