新たな決意をのぞかせる。25年ぶりにリーグ制覇を遂げたオリックス。若手の台頭が注目を集めたが、2014年のV逸と、Bクラス低迷の苦杯を知るベテランの存在も忘れてはならない。33歳“浪速の轟砲”の勝負強さが光りサヨナラ打、逆転弾を含め殊勲打は19度を数えた。それでも、頂への挑戦は道半ば。V決定後に口にしたのは、喜びばかりではない。 取材・構成=鶴田成秀 写真=桜井ひとし、BBM 後悔なき道を行く
見据える次なる戦い。2014年、V逸を振り返らない理由が、33歳のベテランの強さを感じさせる。後悔なき道を行く先に“本当の歓喜”が待っている。 ──優勝から日が経ち、新たに思うこと、感じることもあるのではないですか。
T 「優勝したんやな」と、あらためて実感することはありましたよ。でも、それよりCS、日本シリーズがあるという思いのほうが強いというか。うれしかったですし、ホッとした思いもありました。でも、まだ終わっていない。まだ続いていく。その気持ちのほうが強いんです。
──すぐに次の戦いへ切り替わった、と。
T 翌日の朝には。(優勝が決まった)当日はホンマうれしかったですけど、試合をやって決めたわけではなかったですから。お客さんが入って、試合に勝って決まっていたら、また違った感覚があったかもしれないですけど。あの(優勝決定)日は「待つ身」で、CS進出が決まった状態。優勝してうれしい気持ちもありながら、気が抜けない感じはありました。
──待つ身は複雑な心境だったのでは。
T 不思議な感覚でしたね。見ているだけなのに、すごく緊張しましたから(笑)。(
ロッテに)負けてほしいとは思えないんですけど、優勝はしたい。ただ、僕らは全力を尽くしたあと。プレーをするわけでなくて、待つしかできなくて。表現が難しいんですけど、複雑な心境が緊張になったのかな、とも思うんです。
──全日程終了後の優勝は「最後まであきらめない」と言い続けてきた今季の戦いを象徴する幕切れだった気がします。
T そうですね。自分は打てませんでしたが、最終戦、勝って終われたのは大きかった。優勝するにしろ、しないにしろ、良い形でCSに入れると感じていました。

2014年、歓喜に沸くソフトバンクナインを横目にベンチに戻るT-岡田[写真右]。優勝後の会見では「正直(14年は)振り返りたくない」と言うも……。
──2014年のV逸の悔しさを知るT-岡田選手ですが、優勝会見では「正直、振り返りたくない」と言っていました。その理由を教えてもらえないでしょうか。
T あの年は、いろんな思いがあるんですよ。それに『たら・れば』を言い出したらキリがないし、後悔はしたくないんです。あの年は結局、勝ち切れなかった。その思いは、もちろん自分の中にあります。確かに、あの経験があったから今年、優勝できたのかもしれない。でも、それも『たら・れば』の1つなのかなって。
──悔しさは胸に刻んでいるからこそ、自ら振り返る必要はない、と。
T そうですね。それに、まったく同じシチュエーションが起こることはないですし。だったら、そこまで、あの年の記憶にこだわる必要はないのかな、と。
──ただ経験は生かすものでもあります。
T それが難しいところ。あのときは、シーズン終盤に負けられない試合が続いていましたし、1試合1試合ヘロヘロになりながらやっていました。今年に関しては、そこまで気負わずにできたかな、と思いますけど、それって、あの年の経験があったからできたのかもしれないですし、年齢を重ねたからできたのかもしれない。まだ僕の中で答えはなくて……。だから・・・
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