優勝という最高の結末を迎えたWBC。指揮官が最後の仕事として侍ジャパンでの戦いを総括した。 写真=高塩隆 第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、侍ジャパンを3大会ぶり3度目の世界一に導いた日本代表の
栗山英樹監督が、3月27日に都内の日本記者クラブで会見を行った。
冒頭から侍ジャパンの指揮官としての重圧について「最初の予選の4試合、予選落ちするわけにはいかないプレッシャーはあった。人生の中でこれから先、あんな感じに自分が追い込まれていくことはないんだろうな」と正直に吐露。
大谷翔平(エンゼルス)や
ダルビッシュ有(パドレス)をはじめとしたメジャー・リーガーの招集については「みんなが夢を持てるようなチームをつくらなければならないというのは大きな使命だった」と振り返った。
アメリカとの決勝では8回ダルビッシュ、9回大谷という夢の継投が実現したが、「アメリカのメジャー・リーガーを最後に抑えるとしたら誰でも思い浮かぶのはあの2人。若いピッチャーからどんどん突っ込んでいったが、一人ひとりに聞いたら『足が震えた』とか『全然覚えてない』とか。後ろに行けば行くほどプレッシャーが掛かるので。最後、あの2人くらいしか超えられないかな」と説明。そして、「ただ、そこまでが僕の仕事だと思っていた」と、覚悟と信頼を持っての起用だったことを口にした。

栗山監督は決勝の9回のマウンドを大谷に託した経緯も語った
一方、大会のあり方に苦言を呈す場面もあった。日本人MLB選手の参戦については「今の形のままではMLB選手は参加しにくくなる。それはファンにとっても面白くない」と語り、大会中の日程変更にも言及。「ルールを最初から決めておかないと。準決勝はアメリカだと思っていた。優勝したいという以上に、アメリカをやっつけたいと、そのためにピッチャーの起用も考えていたが、(実際には)アメリカとは決勝だと。結果的に良かったが、何年もかけて準備をしてきている。途中で変わるのはいくらメジャーが主催でも違う。それは訴えてきたし、ルールは決めてほしい」と言葉を強めていた。
「侍の四番」として重責を担った
村上宗隆(
ヤクルト)とのやり取りから、捕手3人の起用法、日系人選手として画期的な侍参戦となった
ラーズ・ヌートバー(カージナルス)の招集について悩みや葛藤があったこと、国内のフィーバーについて「1人でも2人でも子どもたちが野球をやってくれるかもしれない」という将来への期待まで、多くのことを振り返りながら侍ジャパンのWBCでの戦いを総括。自身の今後については「自分の夢というか、やらなければならないことに向かってしっかりやっていきたい。子どもたちに対して何かできることはやらなければならない。誰も僕に何かやれと言われなければ、何か探して一生懸命やっていく」と語った。
最後は「感謝」と座右の銘である「夢は正夢」としたためた色紙を披露。21年末の監督就任から務めた大役を、最高の形で終えた。