
サイ・ヤング賞投手が日本でこんな雄たけびを上げるとは予想だにしなかった
4月に限れば球団最多記録の16勝を挙げた
DeNAの勢いが止まらない。5月8日現在セ・リーグの首位を快走中で、序盤戦はほぼ完璧な内容で終えたと言える。特に目につくのは、先発陣の充実ぶりだ。先発投手の勝利数はリーグ2位の
阪神(11)をしのぐ13をマーク。規定投球回以上投手の防御率では
東克樹がリーグ1位(0.64)、
石田健大が同2位(1.55)でチームを引っ張り、防御率2点台の
ガゼルマンや
平良拳太郎も勝利を重ねている。そこに、4月後半、
今永昇太、
大貫晋一の左右のエースが合流し、陣容は厚くなっていった。
そんな中、5月3日の
広島戦(横浜)で、
トレバー・バウアーが来日初登板を果たした。バウアーは2回にMLB・レッズ時代の同僚・
デビッドソンにソロを被弾するも、左打者を多く並べた広島打線に対し外角のカーブと内角からシンカー気味に落ちる新球・スプリットチェンジを効果的に使い、的を絞らせなかった。投球のハイライトは、4対1で迎えた7回二死二、三塁のピンチの場面。代打・
松山竜平を142キロのスプリットチェンジで空振り三振に仕留めると、雄たけびを上げた。2020年のサイ・ヤング賞右腕が、この試合に懸けていたことは誰の目にも明らかだった。
ここでマウンドを譲ったバウアーは、7回1失点9奪三振で来日初勝利を挙げた。
試合後の取材では、デビッドソンが本塁打の次の打席に入る際に、バウアーから声を掛け「なんてことをするんだ」とジャブを入れ、デビッドソンから、「私は.180くらいしか打っていないよ」と返されると、今度はお返しとばかりに「あの打球は180メートルくらい飛んでいたよ」という気心知れた者同士のやり取りがあったことを、報道陣の前で明かしている。

プレーが終われば報道陣にもよく笑顔を見せる
気難しいと思われがちなバウアーだが、それはプレー中のみ。お立ち台では「横浜しか勝たん」と茶目っ気もたっぷりだ。
「ファンのためにも勝つことが重要」だと語る大物右腕は“横浜頂戦”の重要なピースとなる。

バウアーのタオルやユニフォームを掲げるファンも多数。注目度の高さをうかがわせる
写真=高塩隆