昨秋のアジアプロ野球チャンピオンシップ優勝を経て、2024年の井端ジャパンの船出となった欧州代表との2試合。今年11月に開催されるプレミア12を見据えながら、鮮やかに連勝を飾った。 取材・文=杉浦多夢 写真=毛受亮介 球界に与える刺激
若手の発掘、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)組をはじめとした従来の主軸と新戦力の融合、そして侍の魂の継承という明確なテーマを持って臨んだ2戦で、確かな成果を得ることができたと言える。
象徴的なのが侍ジャパンのトップチームとしては初の代表選出となった4人の大学生だ。
宗山塁は代表合流直前に死球を受けた右肩甲骨の骨折が判明して試合出場の機会がなかったものの、金丸夢斗と中村優斗の両投手、外野手の西川史礁は
井端弘和監督が「代表に入る力を持っている」と語っていたとおり、存分に自らの力を発揮して大きなインパクトを残した。
第2戦で先発した金丸と、あとを受けた中村は完全継投への流れをつくり、第1戦で途中出場から2安打1打点とまずバットで魅せた西川は、第2戦の7回に中堅守備で安打性の当たりを見事なダイビングキャッチ。パーフェクトリレーをアシストし、打撃だけではないトータルプレーヤーとしての確かな素地を示している。
指揮官も大学生の躍動に「プロに入る前でもこれだけの選手がいると、こちらも思わされた。ほかの大学生を含めていい刺激になったはずだし、アマ球界も盛り上がるかなと思う」と確かな手応えを口にする。
大学生たちが手にしたものは、「自らの力が通用する」という自信だけではない。「侍の魂」を大学球界、アマ球界へと持ち帰る「伝道師」としての大役だ。戦前に指揮官が語っていた「短い時間だが選手たちがコミュニケーションをとり、いいチームになってほしい」という思いが現実のものとなったからだ。
宗山は3月5日の前日練習で
源田壮亮や
中野拓夢、
小園海斗らと守備練習を行い、先輩たちに声を掛けてもらいながら「こんなにいい経験はない」と多くのものを吸収した。金丸は同じ左腕の隅田知一郎からチェンジアップの極意を教わり、中村は同級生の
山下舜平大からプロとしての心得を聞いた。2人そろって登板した第2戦ではベンチで
宮城大弥をはじめとする先輩たちと球種の握りなどについて意見交換をしていた。西川も「長く活躍できる選手に」と、プロに入ったその先を見据えることができるようになっている。
そして何より侍戦士としてのあり方だ。中村の「村上(
村上宗隆)さんとか超一流の方が、一番通る声でチームを鼓舞する声出しをされていた。自分もチームに持ち帰って、一番声を出そうと思います」という言葉がすべてだろう。
侍ジャパンのトップチームから、プロだけにとどまらず球界全体に刺激を与えていく。井端監督の思いがこもった目論見は成功した・・・
この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。
まずは体験!登録後7日間無料
登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。
登録済みの方はこちらからログイン