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ペナントレース EXPRESS 2024【セ・リーグ】

DeNA・筒香嘉智 存在感放つハマの大砲 進化を呼び込むキーマンに

 

復帰戦での一発に内野席は総立ちのお祭り騒ぎ


 野球ファンになじみの深い応援歌が再びハマスタにこだましている。

「よーこーはーまのそーら高くー」

 希代のスラッガー、筒香嘉智が5年ぶりにDeNAに帰ってきた。

 大型連休の最終日だった5月6日のヤクルト戦、3万3284人が詰めかけたハマスタでの復帰戦。六番・左翼でスタメン出場し、7回の第3打席で左中間へフェンス直撃の二塁打を放ち復帰後初安打をマークした。久々のNPB舞台に対応してみせると、さらなる衝撃は2点を追う8回二死一、二塁の第4打席だった。エスパーダの初球、真ん中寄りの直球を逃さずとらえ、右中間席へ劇的な逆転の1号3ランを運んだ。ド派手な復帰戦でいきなりお立ち台に帰ってきた主砲は「これだけのファンの皆さんの前でプレーできることを本当に幸せだなと思っていますし、ダイヤモンド一周しているときは特別な時間でした」と万感の思いを口にした。

 勢いはとどまることを知らず、10日の阪神戦(横浜)では6回に右中間へ日本では6年ぶりとなる適時三塁打。11日の同戦では最大7点差の逆転劇を完結させる決勝の2号ソロを放つなど、いきなり一軍の舞台で勝負強さと長打力を発揮した。2020年首位打者の佐野恵太、昨季打点王、最多安打の打撃2冠に輝いた牧秀悟、昨季首位打者の宮崎敏郎ら好打者がそろうベイスターズ打線に厚みを加え、12日終了時点で5試合に出場し、打率.278、2本塁打、5打点。チームの中核へと再び駆け上がった。

 しかし、ここまでの道のりは順風満帆だったわけではない。16年に44本塁打、110打点でセ・リーグ打撃2冠に輝き、17年にはWBCで侍ジャパンの四番も担った強打者。19年シーズン終了後、ポスティングシステムを利用してMLB・レイズと契約し、メジャー挑戦の夢をかなえたが、腰痛や打撃不振で結果を残せず、2年目の21年は3球団を渡り歩いた。その後もマイナー契約や環境の厳しいアメリカ独立リーグのアトランティック・リーグでもプレーするなどもがき続けたものの、再びメジャー契約を勝ち取ることはできず。現地時間今年3月21日にオプトアウト(契約破棄条項)を行使してマイナー契約を結んでいたジャイアンツを退団した。

 そこから約1カ月。「どうなるか分からない状況が続いた中で正直、日本に復帰するモチベーションがいまひとつ上がらなかったのが事実」と当時を振り返った。一人、練習を続けた筒香サイドには獲得調査を明言した巨人など複数球団からオファーが届いた。その中には当然、渡米後も筒香の意思を尊重しながらコミュニケーションを取り続けていたDeNAもあった。「いろいろ考えていく中で、やはりベイスターズで優勝するという思いが、僕の日本でプレーするモチベーションになった」。恩義のある横浜の地で、日本球界への復帰を決意した。

 4月16日に渡米前と同じ背番号25で、3年契約の合意が発表された。18日には横浜スタジアムで異例の公開入団記者会見。雨空の中でも集まった9600人のファンの前で「この横浜スタジアムで再び野球ができることに非常に興奮している。勝利、優勝を強く思って毎日ハードにプレーしていきたい」と誓った。

 合流以降は、横須賀市の球団施設「DOCK」で調整し、20日のイースタン・巨人戦(横須賀)に四番・DHで出場。1657日ぶりの日本での実戦に、早朝から2950人ものファンが詰めかけ、外野席も開放される大盛況の中、第3打席に中前へ適時打を放ってみせた。

 25日の同・日本ハム戦(鎌ケ谷)では日本復帰後初めての左翼守備に就き、右前打も放ったが「振りにいった感覚が、どうしても日本の投手と海外の投手で違う。そのズレはまだ結構ある。そこが戻らないと、一軍でとなっても、そんなに甘い世界じゃないと思う」と日米で異なる投手の間合いへの順応、自身の体のキレを取り戻すことをテーマに掲げた。首脳陣と毎日話し合いを重ねる中で、一度実戦出場を見送り、再びDOCKで、若手時代を知る藤田一也育成野手コーチ、大村巌育成打撃コーチらとも意見を交換しながら逆方向への打撃を意識して見つめ直した。

 30日の同・オイシックス戦(横須賀)で初めてフル出場。5月3、4日の同・ヤクルト戦(横須賀)にも出場し「コンディションはかなり良くなっている」と手応えを口にした。首脳陣のGOサインも整い、6日のヤクルト戦(横浜)でついに一軍へ合流していた。

 そのバットでの成績もさることながら、二軍調整中には若手にも気を配りながら気さくに声を掛け、周到な準備や練習姿勢でも手本となっている。一軍合流後も、8日のヤクルト戦(横浜)で失策を犯したドラフト1位・度会隆輝に試合後に時間を取って声を掛けるなど、渡米前の19年まで主将を担った経験を生かし、精神面でもチームに大きく貢献している。

 入団会見に同席した萩原龍大チーム統括本部長は「今年のスローガンは進化。(筒香の)常に進化し続ける姿勢をずっとわれわれも背中を見て学んでいましたし、今のわれわれの進化する機会に非常にいい人が帰ってきてくれた。一緒にさらに進化をし続けていければ」と期待を込めた。

 自身の現役時代もともに戦った三浦(三浦大輔)監督は、筒香が帰ってきたチームについて「久しぶりにゴウ(筒香)のあのベンチを鼓舞する声を聞いて、さらにパワーアップしたかなと。チームとしても進化はできているというのは感じている」とその存在感に手応えを口にした。

勝負強さ、長打力に加え豊富な知識、人間性でもチームに好影響を与えている


 1998年以来、12球団で最もリーグ優勝から遠ざかっているDeNA。勢いに乗れば止まらないが、CSでは2年連続ファーストステージ敗退、昨季も勝てば2位だったレギュラーシーズン最終戦に敗れるなど要所で勝ち切れない場面が目立った。「毎日が生きるか死ぬか、勝負の日々だった」というアメリカでの4年間を過ごした筒香は、一皮むけようとするチームの重要なピースとなる。

写真=井田新輔、桜井ひとし
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