聖地・甲子園での偉業を成し遂げた。巨人・戸郷翔征が5月24日の阪神戦で、史上89人目、通算101度目となるノーヒットノーランを達成。優勝を争う上でも最大のライバルに、ジャイアンツのエースの力を見せつけた。 
偉業を成し遂げると、真っ先にベンチを飛び出してきた長野久義[右]から祝福のシャワー[写真=佐藤真一]
球団史に残る伝説の大投手・
沢村栄治の名前をよみがえらせた鮮やかな快投劇。9回二死、最後の打者となる
中野拓夢に「最後のフォークで決めるところは腹をくくっていた」と自慢のウイニングショットでバットに空を斬らせると、戸郷翔征はマウンドで両腕を突き上げ、雄叫びを上げた。
巨人の投手による甲子園での阪神戦におけるノーヒットノーランは、1936年9月25日にプロ野球史上初のノーヒッターとなった沢村以来88年ぶり。球団としては2018年クライマックスシリーズ・ファーストステージで
菅野智之が成し遂げているが、公式戦では同年の
山口俊以来となる快挙。史上89人目にして通算101度目のノーノーとなった。
チームは引き分けを挟み4連敗中、交流戦前の最後の3連戦。「チームとしてもいい結果が出ていなかったので、何とか初戦を取りたい」という思いが、丁寧な投球につながった。ストレートは今季最速の152キロを記録するなど、
杉内俊哉投手チーフコーチも「スピードは出ている」と上々のコンディションだったが、4回二死まで奪三振はゼロでフライアウトが10。一転、後半はゴロアウトが増えていく。
3回に自らの一塁悪送球、5回には一塁・
岡本和真が鋭い当たりをファンブルして失策と記録され走者は許したものの、テンポの良い投球は揺るがない。フォークに加え、今季初コンビの
岸田行倫とも「スライダーがいいところに決まっている」と確認するなどバッテリーの連携も抜群で、「6回が終わった時点で、あと9個と思ってやった」と振り返るのも納得の投球で阪神打線を翻弄していった。
100球を超えて迎えた9回は、先頭打者にこの試合初となる四球を与えて「焦った」と言うように、徐々に変化球の押さえが効かなくなりつつあったが、一死二塁から
近本光司の鋭い打球は一塁・岡本和の正面に。見えない力の後押しを受けながらも無安打のまま27個目のアウトをもぎ取り、「言葉では表せない感動があった。今までやってきたことが間違いじゃなかった」と顔をほころばせた。
エースの快投を見届けた指揮官も「もう素晴らしい。それしかない」と脱帽し、沢村以来の甲子園でのノーノーに「泣きそうになっちゃった」。そして、あらためて「ジャイアンツの投手陣を引っ張っていく存在」と厚い信頼を口にした。
戸郷自身も、「今日だけは余韻に浸りながら夜を迎えたい」と言いながら、「一番はチームの優勝が目標。チームに勢いをつけるようなピッチングをまた続けたい」と言葉を継いだ。4年ぶりのV奪回へ、背番号20がその右腕でチームを加速させていく。
■5月24日 阪神対巨人(甲子園) 戸郷翔征の投球詳細