本拠地・マツダ広島の開場後初となる大偉業を成し遂げた。広島・大瀬良大地が6月7日のロッテ戦で、史上90人目、通算102度目となるノーヒットノーランを達成。3度目の右肘手術を経て復活を期した今季大きな花がマウンドに咲いた。 写真=井沢雄一郎 
偉業を達成し、バックスクリーンを背にウイニングボールを持ちながら笑顔を見せる大瀬良
勝利で喜びに浸るカープファン。だが、その喜びはいつもとは違うものだった。
9回二死一、二塁の場面。最後の打者となった
ポランコの力のない打球を右翼手・
野間峻祥がガッチリとつかむと、マウンド上の大瀬良大地は捕手・
會澤翼に後ろから抱きかかえられながら、両手を高く突き上げた。
球団としてのノーヒットノーラン達成者は2012年4月6日の
DeNA戦(横浜)の
前田健太(現タイガース)以来、史上5人目。本拠地に限ると、1999年5月8日の
中日戦で成し遂げた
佐々岡真司以来、25年ぶりだ。しかし、これは旧広島市民球場時代の出来事であるため、2009年に開場したマツダ広島では初の快挙となった。
チームは鬼門とされる交流戦で一時は5連敗と苦しんだ。しかし、そこから連勝と持ち直しつつあった中での快投劇。
新井貴浩監督は「なかなかお目にかかれないものを見せてくれた。素晴らしかった」と絶賛した。
序盤から打たせて取る投球が続いた。奪った三振は2つのみ。2回と8回にいずれも四球で出塁を許したが、「低めの良いところにボールが集まった」と最速148キロの真っすぐ、スライダー、カットボール、フォーク、シュートといった多彩な球種を低めに丁寧に投げ込み、ゴロアウトは11、フライアウトは14を数えた。
「ファンからの『頑張れー』という声を聞き、ここまで来たら頑張ろう」と上がった9回のマウンド。簡単に2アウトまでこぎつけたものの、そこから突如制球を乱して2者連続四球を与えた。ここでマウンドにチームメートが集まり、二塁手・
菊池涼介から「あと1アウト、みんなで取ろうぜ」と味方を鼓舞すると、大瀬良も「打たせて取るので頼むぞ」とナインに声を掛けた。
そして、129球目に投じた144キロの真っすぐで27個目のアウトを奪い、「(大記録は)自分には縁がないと思っていたので、まだ信じられない気持ちです」と興奮冷めやらぬ表情だった。
昨季まで5年連続で開幕投手を務め、18年には最多勝利と勝率第一位に輝いた。だが、ここ数年は度重なるケガに苦しみ、満足なシーズンを過ごすことができなかった。昨オフは自身3度目となる右肘手術に踏み切り、以降は地味なリハビリに励んだ。
「いろんな方の支えのおかげでマウンドに立てている。支えてくれた人たちが喜んでくれていると思うと、とてもうれしい」と感謝の意を表し、「最近は若いアマチュアの選手とかも、よく手術する子が増えているという現実を聞くので、こういう人間もいるという姿をこれからも見せていければ」と思いを語った。
一方で、「達成感に浸れるのは、今シーズンをしっかり終えてから。なによりもチームが勝てたことが一番。次の試合が大事になってくる」と早くも先を見据えた。
あくまで目指すのは6年ぶりのV。完全復活を印象付けた背番号14のエースがチームのために全力で腕を振り続ける。
■6月7日 広島対ロッテ(マツダ広島) 大瀬良大地の投球詳細