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楽天・田中将大 復活への一歩「1日1日、自己を高めるため、スキルアップのために磨いていく」

 

ペナントレースもまもなく終幕を迎える9月28日。杜の都・仙台のボールパークにエースが帰ってきた。険しい道のりを乗り越えて迎えた今季一軍初登板。あふれんばかりの声援を背中に受けて93球を投じた。悔しさが残る結果となったが、それでも前を向く。
文=阿部ちはる 写真=井田新輔

ストレートは最速147キロを計測。5種の変化球も交えて、オリックス打線に立ち向かった


 大歓声の中、背番号18が楽天モバイルのマウンドに上がった。362日ぶりの一軍マウンド。熱気と興奮が球場を包む。試合前、ウォーミングアップのためにグラウンドに姿を見せた田中将大を大きな拍手が迎えた。「びっくりしました。あんなに歓声があるなんて。準備をしているときからこの声援に応えたいなという気持ちは強くなりました」。9月28日のオリックス戦は昨年10月に受けた右肘のクリーニング手術からの復帰戦となった。

 当初は開幕に照準を合わせ春季キャンプにも参加。だが状態が上がらず開幕直前に二軍調整となると、3月20日のイースタン・DeNA戦(横須賀)を最後に実戦から遠ざかった。球威やコントロールが本来の姿とは程遠く、4月の段階で永井怜投手コーチは「球の質が戻ること」を一軍復帰への条件としていた。

 8月7日の富士大との練習試合でようやく実戦復帰。1回2失点で22球ながら手応えは感じていた。続く13日のイースタン・DeNA戦(横須賀)では3回途中無失点。徐々にイニング数と球数を増やし9月4日の同・DeNA戦では6回途中2失点で102球を投じ、13日の同・日本ハム戦(森林どり泉)で7回3失点と、二軍での4試合で不安を払拭し、一軍昇格をつかんだ。

 一時は復帰の目途が立たず苦しい時間も過ごしたが、我慢強く、目の前のことに丁寧に向き合った。そして一段一段、階段を上がりファンの待つマウンドに戻ってきたのだ。

復帰戦は責任果たせず、逆転CSへ痛恨の1敗


 独特の雰囲気の中で迎えた復帰戦は「緊張していた」と振り返る。それでも冷静さは失わず、ベテランらしいマウンドさばきで3回まではランナーを出しながらも無失点に抑えた。だが1点リードの4回、連打で満塁のピンチを招くとセデーニョの犠飛と渡部遼人のスクイズで勝ち越しを許してしまう。続く若月健矢にも右前打とされ3失点。5回には太田椋に甘く入った直球をライトポール際へ運ばれ5回4失点での降板となった。

 田中は「今振り返れば2点差になったところがポイントだった」と振り返り、今江敏晃監督は「初回から飛ばしていた分、(4回、5回は)少し球速も落ちていた」と右腕の投球を分析。さらにチームは2対5で敗れクライマックスシリーズ進出を争う3位・ロッテとのゲーム差が2に広がってしまった。

「今季初登板とか、リハビリしてきて1年ぶりの登板だとか、どういう状況であれマウンドに上がったら自分の事情なんか関係ない。こういう投球になってしまい、今日のゲームを落としてしまって悔しいです」

 まだ本調子ではないとはいえ、大事な一戦を落としたことへの責任を一身に背負った。

黒星を喫した一軍復帰戦。チームに勝利をもたらすことができなかったことを何よりも悔いた


 日本球界復帰後は昨季時点で20勝32敗。「この3年間は思い描いていたものではない」と吐露したこともある。それでも「そのときそのとき、自分の持っているものを出し切ってやってきた。それを全部がダメだったと自分自身を落とすことはない」と強い責任感と向上心を持って野球と向き合ってきたことは自身の誇り。今季もその姿勢を貫き、期待に応えられないもどかしさの中、地道なリハビリを乗り越えて戻ってきた。悔しさは残ったが、ここで終わるつもりはない。

「応援してくれる人たちのためにも頑張りたい」

 日米通算200勝まで残り3勝。ファンのため、そして高みを目指す自分のため、前を向く。

「1日1日、自己を高めるため、スキルアップのために磨いていく」

 偉業達成への再出発、そしてファンが待つ勝利の瞬間へ。大きな一歩を踏み出した。

PROFILE
たなか・まさひろ●1988年11月1日生まれ。188cm97kg。右投右打。兵庫県出身。駒大苫小牧高-楽天07[1]-ヤンキース14-楽天21=11年。
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