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松坂世代、ダイエー戦士 ラストワンの決断

<担当記者 惜別コラム──心からの感謝を込めて──>ソフトバンク・和田毅 輝き続けて、楽しみ続けて

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 初めて和田毅投手にインタビュー取材をしたのは、2019年の秋だった。前年一軍登板なしの左腕だったが、同年は復活して日本シリーズまで投げ抜き、秋季キャンプにも参加。いろいろ聞きたいことがあり過ぎて興奮していたことに加え、取材部屋に入ってきた左腕のオーラにも圧倒されたのだろう。いつもインタビューの際に使用するボイスレコーダーの録音ボタンを押し忘れて取材をスタートしてしまった(5分後ぐらいにレコーダーが動いていないのに気づき、事なきを得たのだが)。後にも先にもそんなことはなかったから、今でもすごく印象深い。


 私が担当になったときにはアメリカも経験し、ベテラン選手の中でもその実績は群を抜いていた。にもかかわらず、いつも気さくに接してくださった。特に今季は夏場、和田投手がファームで調整していたこともあってタマスタ筑後でお会いすると、いつも「暑いでしょ? 気をつけてね」と体調面を気遣ってくださり、少し涼しい日は「今日は過ごしやすいね」と笑顔を交わしたり。左腕のキャリア、残した功績はもちろん、その人柄でも、一回り以上も年が離れた後輩選手からも慕われる理由は明らかだった。


 和田投手には入団したときからの大きな目標があった。『40歳になったときにも第一線で、先発として投げている』というものだ。その節目を21年シーズンに迎えてもなお、第一線で、先発で輝き続けた左腕。23年シーズン中のインタビューでは終始「楽しい」を繰り返し、今この瞬間を少年のような笑顔で、こう表現した。

「ゲームで言ったら、ボーナスステージ」

 今回の決断は和田投手の中で、このボーナスステージは“遊び尽くした”ということなのだろう。今度は新たなステージで、新たな“ゲームクリア”に挑む。


 引退会見に駆けつけた周東佑京選手からは黄色いバラの花束が、同期入団の新垣渚氏をはじめ高谷裕亮バッテリーコーチ、明石健志二軍打撃コーチ、そのほか後輩選手たちからは青いバラが1輪ずつ贈られた。黄色いバラの花言葉は「友情」「思いやり」「幸福」「温かさ」。青いバラの花言葉は「夢叶(かな)う」「神の祝福」「奇跡」。たくさんの思いやりを持って周囲に幸せをくれた左腕は、第2の人生でもたくさんの夢を叶えて奇跡を起こしていく。(文=菅原梨恵[ソフトバンク担当7年目])

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