アストロズからFAとなっている菊池雄星がプロデュースし、岩手県花巻市に整備した全天候型屋内複合野球施設「King of the Hill(キング・オブ・ザ・ヒル)」(通称:KOH)が完成した。11月17日にオープニングセレモニーが行われ、菊池自身が始球式に登板。野球を通して人を育む、新たな拠点が門出を迎えた。 取材・文・写真=相原礼以奈 ※11月27日、エンゼルスとの契約合意が発表された 
延べ床面積約1400平方メートル、最先端の機器も備えて完成したKing of the Hill
「マウンドの王」を目指して
King of the Hill──。
「マウンドの王」を意味し、メジャー・リーグで特別な敬意を持ってピッチャーを称える言葉。始球式を終えた菊池雄星は、「このマウンドでたくさん練習をして、『マウンドの王様』を目指して僕自身も頑張りますし、子どもたちにもそういう夢を持って練習してほしい」と願った。
KOHは菊池の母校・花巻東高にも近い、花巻市総合体育館の隣接地に完成した。菊池自身が帰国時にトレーニングする場であり、子ども対象の野球スクールや、地域住民向けのパブリック・ビューイングなどのイベントも行える場として整備。約1400平方メートルの広さに、ピッチング、バッティング、トレーニングのエリア、浴場やサウナなどを備え、世界最先端の機器も導入。整備費は全額、菊池が負担している。
「プロに入ってすぐに、花巻、岩手に何か野球で貢献できたらいいなというものは持っていた」
菊池自身を含むプロアスリートの練習拠点に加え、次世代の育成、地域への還元の目的を持ち併せるKOH。その構想が具体的に動き始めたのは、5年ほど前。新型コロナ禍をきっかけに、菊池はまずアメリカの自宅を改装して、ブルペンやジムなど練習環境を整備したという。
「コロナが落ち着いても、いつ、そういう状況になるか分からない。日本とアメリカで24時間野球ができる場所が欲しいなと思った」
さらに、2022年8月には先発から中継ぎに転向。練習環境の確保の必要性をより強く感じ、施設建設へと動き始めた。
菊池がメンタルコーチを頼んでいた、実業家でコンサルタントとして実績を持つ久野和禎氏が協力し、運営を担う合同会社K.O.Hを設立。菊池はビジョナリーファウンダーの肩書きを持ち、久野氏は代表社員を務める。久野氏はセレモニーであいさつし、「雄星さんの思いを受け止めて、しっかりこの事業を経営していきたい」と決意を示した。
12月には、主に小中学生を対象とした野球スクールが開講する。菊池自身が野球選手としてさらに上を目指しつつ、自身を育んだ地域や次世代への献身を具現化していくプロジェクトは、始まったばかりだ。
「僕もできる」と思ってほしい
岩手にいつか貢献したい。その思いの根底には、センバツ準優勝、夏の甲子園ベスト4に輝いた高校3年時、2009年に見た光景がある。
「勝ち上がるにつれて・・・
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