高松東高は香川県で有数の歴史と伝統を誇る公立高校である。昨夏の香川大会で45年ぶりに準決勝へ進出すると、同秋も29年ぶり4強。少数部員、施設面のハンディ、創意工夫での困難な環境の克服が認められた。 取材・文・写真=喜岡桜
※学年表記は2025年4月以降の新学年 
全部員が地元出身者で構成され、学年に関係なく絆が深い。こうした結束力が、試合での集中力につながる
積極的な社会貢献活動
気温35度の乾いた空気の中を、白球が飛んでゆく。1回裏の先頭打者が、初球をフルスイング……。高松東高の一番・佐々木大輔(旧3年)が昨夏の高松商高との香川大会準決勝で、先制本塁打を放った。低反発の新基準の金属バットで、大会第1号。白いバッティンググラブの拳を、強く握った。日焼けした腕に湧く玉のような汗は、真夏の太陽のせいか。いや、違う。高松東高、45年ぶりの県4強進出の快進撃を受け、勢いがもたらせた衝撃的な一発だった。
12月13日、全国から推薦された21世紀枠候補校が9校に絞られた。四国地区の推薦校は、高松東高が選出された。今年4月に創立116年を迎える県下有数の伝統校。夏は45年ぶり、秋は29年ぶりに県大会4強入り。その健闘と、小学生との野球交流や、近隣に住む人たちと校舎の西側を走る新川を清掃するなど、継続的で、積極的な社会貢献が評価され、同地区の推薦校になるに至った。
同部による地道な活動だけでなく、他の在校生も、小学生を招いて実験教室や絵画教室を開き、川の清掃を通して地元の人たちと言葉を交わす光景が見られる。この地で長きにわたり「地域に根ざし愛される高校」を目指し、年齢にとらわれず、人と人をつなぐ絆を大切にしている。
3季連続初戦●からの飛躍
野球部員たちは校舎北側にあるグラウンドで日々、汗を流している。サッカー部など他の部活動と共用しているため、打球が当たらないように、注意しながら活動する。全クラス普通科の公立校であり、現在は球児全員が「人文コース」「文理コース」「総合コース」のいずれかに属し、受験も見据える。7限まで授業があることも珍しくなく、複数人が約1時間遅れてグラウンドに現われることもしばしば。高松商高、観音寺総合高、三本松高などスポーツ科を有していない公立校でも甲子園出場を叶える香川において、高松東の環境も、言い訳にはならない。創立以来、まだ見ぬ聖地・甲子園への初出場が目標だ。
鈴木朝雄監督は「ここまで勝ち上がれた要因は、もちろん右腕エースの森井銀冴(もりい・ぎんが)の成長もありますが、それだけではなかったと思っています」と話しながら、時折、選手たちへ目を配る。
鈴木監督は・・・
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