第97回選抜高校野球大会(3月18日から13日間。準々決勝、準決勝翌日の休養日各1日を含む。雨天順延、阪神甲子園球場)の出場32校を選出する選抜選考委員会は1月24日、大阪市内で行われる。一般選考枠30校のほか、2001年(第73回大会)から導入された特別枠「21世紀枠」は2校が選出される。昨年12月13日、日本高野連から全国9地区の推薦校が発表された。運命の「1.24」を静かに待つ、高校球児を追った。 取材・文=井上幸太
※学年表記は2025年4月以降の新学年 
昨秋は県4位で出場した中国大会で1回戦を突破し、岡山学芸館高との準々決勝で敗退した。チームワークの良さが、最大の武器である
「大高」で親しまれる伝統校
野球人口減少、深刻な野球離れ。昨今、盛んに取り上げられている話題である。長らく国民的スポーツとされてきた野球が未曾有の危機に直面していることは、もはや周知の事実だ。変わらず春夏の甲子園が盛り上がる高校野球とて例外ではなく、高野連の加盟校数は2005年の4253校をピークに右肩下がりが続き、部員数も14年から10年連続で下降線を描く。自校の選手のみで公式戦に出場するのが困難で、近隣の選手不足校と合同で出場する「連合チーム」の結成も増えている。24年夏は加盟総数3798校の約1割にあたる403校が連合で参加した。
絶対数の減少に加え、高校野球における競技人口の減少を如実に感じさせるのが、春のセンバツ出場に向けた第一関門となる秋の都道府県大会である。新チーム発足後最初の公式戦となる秋は、夏に引退した3年生を除く2学年で行われる。そのため、何とか単独出場にこぎつけても、選手の総数が大会の登録メンバーの規定数を下回る、“ベンチが埋まらない”チームが続出している。39校が加盟する島根を例にとると、08年に統廃合で加盟校数が40から39に減少して以降は変動なし。昨秋に連合を結成したのは6校3チーム。少子高齢化が加速する地方でありながら、踏みとどまっているように感じられる。
だが、上限の20人に達したのは15校のみ。昨夏の甲子園で8強入りし、日本列島を沸かせた大社高とともに、第1回の夏の地方大会から出場を続けている“皆勤校”の松江北高は12人で秋を戦った。18年末に阪急、
中日などでプレーした
野中徹博氏を監督として招へいし、21年秋の県大会で準優勝するなど強化を進めた私立の出雲西高は、昨年初頭に野中氏が退任したこともあって新入生が思うように集まらず。他部の助っ人を登録して単独出場にこぎつけた。
地域を代表する伝統公立校も、ほんの数年前に上位に食い込んだ私立校でも、選手不足に陥る現状がある。一寸先は闇、とでも言いたくなる昨今の情勢にあって、逆境を跳ね返したチームがある。それが先述の2校と同じく島根に所在し、昨秋の中国大会で8強入り、21世紀枠の中国地区推薦校に選出された大田高だ。
地元で「大高(だいこう)」の愛称で親しまれる、1921年設立の伝統校の選手はわずか11人。女子マネジャーを含めても総勢15人という小所帯である。
21年に大田二中が日本一
大田市は島根県内有数の“野球どころ”として知られる。市内の大田二中は21年に山陰勢として初めて軟式の全国大会である「全中」を制するなど・・・
この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。
まずは体験!登録後7日間無料
登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。
登録済みの方はこちらからログイン