銭の取れるショート

　元阪神監督の吉田義男が亡くなった。

　私の2学年下。同世代の盟友がこの世を去るのは残念だ。

　早大時代に「六大学の貴公子」などと評価をもらっていたころに当時の森茂雄監督が言った。「お前よりうまいヤツがいるぞ」――それが吉田義男だった。

　誰かと思って調べたら立命館大に吉田義男という背の低い男がいた。その後、吉田は大学を中退して私より早く阪神に入団。1年後の1954年に私は巨人に入った。

　長嶋茂雄と私は阪神の三遊間である三宅秀史、吉田と比較された。火付け役は当時の評論家でのちに野球殿堂入りした小西得郎さんだった。「長嶋、廣岡より吉田、三宅のほうがうまいのではないか」と解説。評論家としてあれだけ上手に煽った人もいない。ファンは伝統の2球団の三遊間コンビに注目した。

　吉田は背が低くてもやれるということを阪神ファンに証明するために何をすべきかと一生懸命に考えた。その結果、派手なプレーで大きく見せることを心掛けたという。試合前の練習から吉田は・・・