今年こそは「春男」を目指す。
牧田明久。一昨年の契約更改で打ち明けた一言が印象的だ。「友達から言われたんですよ。『明久(あきひさ)は秋しか活躍しないな、なつひさやはるひさに名前変えたら?』って」
中盤から後半にかけて大きく結果を残す、周囲はそんなイメージを持っていた。
昨年はそんな思いもあってか、序盤から猛アピール。開幕当初は絶対的主砲のA.
ジョーンズと、優勝にも大きく貢献した
マギーの間の五番を務めた。開幕直後の3月30日の
ソフトバンク戦では決勝の本塁打と、首脳陣の期待に大きく応えた。だが4月下旬に「左橈側手根伸筋腱部分断裂で全治3~4週間」と診断され離脱。「はるひさ」襲名はお預けとなった。
そして記憶に新しいのが
巨人との日本シリーズ第7戦、最終戦にスタメン出場し、第2打席に左中間へ本塁打を放つなど大活躍。結局この年 も「あきひさ」で終わってしまった……。
30歳を過ぎ、若手も育ってきた。だが守備力とパンチ力はまだまだ負けない。すでにオープン戦でも2本塁打。しかも2本とも、右方向へ放り込むなど、さすがのパンチ力を見せつけた。
星野仙一監督は「シーズンに取っとけ!」と笑いながら褒めた。「調子がいいかと言われたらまだまだだとは思いますけど、ケガをしないで、とにかく1年を乗り切りたいですね」
ここまで左腕が相手のときは六番打者としてのスタメン出場が続いている。右投手の時に先発する枡田が当面のライバル。「周りは意識しない。自分の仕事をしたい」。静かにそう語る男が、V2を目指すチームの春の起爆剤となる。