勝利を手繰り寄せる放物線。将来の
楽天を背負う存在が才能を開花させ始めている。西田哲朗。7月21日の
西武戦(西武ドーム)、3点を追う8回無死二、三塁、ボウデンから同点となる3ランを左翼席中段に放った。打球を見届けながら「どうだ」とばかりに豪快にバットを放り投げた。9回に1点を加えて打撃戦に勝利。「後半戦初戦ということでなんとしても勝ちたい、そして勢いをつけたいという気持ちでした」。この日のヒーローに選ばれた男は、そう答えてファンの声援を受けた。
6月まで打率.219。今季、飛躍的に出場機会が増えたが、レギュラーを確立したとは言えなかった。それが7月に入り54打数20安打。打率も2割台後半まで上昇。
田代富雄打撃コーチが「将来は三番が打てる」と期待する24歳が勢いに乗ってきた。
グラウンドを離れれば、動物が好きという優しい青年。「大きい動物が好きなんです。実家でもラブラドール・レトリーバーを飼っています」と照れる。出身地にある大阪では高校時代、海遊館に足を運んだ。「ジンベエザメ目当てに行きました。当時の彼女と」。同所の看板動物でもあったそのジンベエザメは2匹とも、先日死んでしまい、西田もショックを覚えた。「ジンベエザメへの追悼弾にしたいですね」。試合後、汗をぬぐいながらそう言った。
新加入のラッツが三塁で固まり、遊撃の筆頭は松井稼だったが、ここへ来てラッツが骨折離脱。復帰は9月ごろになる見込みで、当面は西田が遊撃を守ることになりそうだ。「前半戦チームは苦しかったが、後半戦は挽回のイーグルスで行きたい」。そのために、西田にかかる期待は大きい。