プロ5年目の男が、チャンスの真っただ中にいる。そのことは、自身でも身に染みて分かっている。
松井稼頭央という大きな存在に真っ向から挑んだシーズン。「自分にとって今年は大事な1年だと思っています」。ここまで昨シーズンの26試合を大きく上回る自己最多の88試合に出場。遊撃でスタメン出場52試合は、大先輩の37試合を上回る。レギュラーを奪い取ろうというところまで成長を遂げた。
7月に入り、打率は2割前半にまで落ち込んでいた。だが、低迷するチームの一方で、打撃は上昇カーブを描いた。8月5日からの
ロッテ3連戦(QVCマリン)では、プロ初の2試合連続猛打賞もマークした。8月は2カード全6試合で安打を放つなど19打数11安打、打率.647。暑い夏に猛打を振るっている。
それまではボール球に手を出す場面も多く、思うような打撃ができていなかった。好調のキッカケとなったのは星野監督の一言。「守備練習の時間を減らしてもいいから、ブルペンでピッチャーの球を見ろ」と指示を受けた。練習の段階から「生きた球」を見続けたことで、見極める力が身についた。指揮官は「俺に怒られてから打つようになったな」と冗談交じりに話したが、効果は絶大だった。
まだ不安も多い。まだ1年間を一軍で戦い抜いたことはない。12日の
ソフトバンク戦(熊本)は腰の張りを訴え、大事を取って欠場。結果が出だした矢先だっただけに「最近のアイツを見ているとワクワク感があったのに、まだまだだな」と指揮官。厳しい言葉も期待の表れ。身長180センチの大型ショートが、1つずつ試練を乗り越えながら大きく成長していく。